
私事で恐縮だが、大学生の娘と一緒にスキーをしたことがある。出掛けたのは蓼科山(たてしなやま)の麓のスキー場。ホテルに宿泊し、スキー用具一式、そこで借りた。
娘は自信があって誘ったのだろうが、筆者はといえば、高校生の時に体育の課外授業で学んだだけ。そして始めたのは山スキーだった。が、スキー体験はそこまで。
四十数年ぶりなので、体力も落ち、技術も落ちていることは間違いない。準備運動をして、リフトに乗り、下りて、先を行く娘を追って滑り始めた。奇妙なことに気付いた。下手にはなっていなかったのだ。練習もしていないのに上達している。
その秘密がスキー板にあったことを後になって知った。高校生の時に使った板は身長よりも長く、先端はとがっていた。しかも重い。ところが借りた板は身長より短く、先端が幅広く丸っこい。そして軽い。それを借りた時、これは扱いやすそうだと感じた。
スキー板の形状に革命的な変化が起きたのは1990年代。操作も回転も容易な板が研究され、開発された。その結果、2010年代になると雪山を滑るバックカントリースキーが流行し始めた。
スキー板はトップとテールで幅が広く、真ん中がくびれている。そのくびれをラディウスといい、回転できる半径をメートルで示している。老いてうまく滑れたのは、科学技術の成果。最大の恩恵を受けているのはスキー各種目の選手たちだ。
(岳)



