【社説】マスク緩和 主体的判断で脱マスク進めよ

新型コロナウイルス対策で推奨されてきたマスク着用のルールが緩和され、原則として室内外を問わず個人の判断に委(ゆだ)ねられることになった。それぞれの判断を尊重しながら、着実に脱マスクを進めていきたい。

政府が新たな指針示す

政府が個人の判断に委ねるとしたのは、責任逃れの印象は否めない。しかし完全に明らかとなったとは言えない新型コロナの特性や、年齢による影響の違いなどから、やむを得ないと言えよう。

新たな指針では、着脱が強制されることがないよう「個人の主体的な選択を尊重」と明記されている。身体的な事情やコロナに対する捉え方は、人によってかなり異なる。個人の判断とされた以上、それをあくまで尊重し、マスク着用を巡るトラブルが起きないようにしたい。

「主体的」という文言は、日本人がややもすれば周りの眼を気にしながら行動する傾向が強いことを念頭に置いているとも思われる。マスク着用について昨年5月に「原則として屋外では不要」とされて以降も、ほとんどの人が着用を続けてきた。

脱マスクが進まなかったのは、屋内外で着脱するのが面倒、冬場の防寒、そして花粉症対策といった理由もあったとみられる。しかし、周りの眼が気になるという人も少なくなかった。

今回新ルールが示されても、まだマスクを着用する人の方が圧倒的に多い。もともと花粉症対策などで日本ではマスクを着用する人が多く、さらに新型コロナで「マスク慣れ」してしまった。マスクの功罪に目を向ける時である。

マスク着用で一番悪影響を受けたのは生徒や学生たちだ。コミュニケーション能力を高め、心情的な交流を深めたい時期に、マスクは壁以外の何物でもなかった。今回の指針で、学校の教育活動では着用を求めないとしたのは当然である。

新型コロナ蔓延(まんえん)で、欧米人にはマスクに対する強い拒否感があることが浮き彫りになった。感染予防上の効果が周知され、欧米人もマスクを着用するようになったが、人間本来の姿としてはマスクなど着用しないのが自然であり望ましい。感染が下火になってから、欧米での脱マスクは早かった。

これまでの惰性でマスクをし続けるのは賢明な態度とは言えない。悪い意味でのマスク慣れから脱却する必要がある。それができなければ、これから日本を訪れる大勢の外国人の眼に異様な印象を与えかねない。

もちろん、新型コロナの脅威が去ったわけではない。とくに重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患を持つ人々への対処はきめ細やかに行うべきである。政府の指針では、医療機関や高齢者施設を訪れる際は着用を推奨している。

着用しないのが本来の姿

指針では、感染防止のため、マスク着用が効果的な目安を例示している。全員が着席できる新幹線や高速バス内ではマスクを不要とする一方、通勤ラッシュ時の電車やバス内では着用を推奨している。マスクをしない生活が本来の姿であることを忘れず、着実に脱マスクを進めていきたい。