【社説】東日本大震災12年 未来を担う若い力に期待

東日本大震災発生から12年を前に、石巻南浜津波復興祈念公園では手を合わせる人の姿が見られた。奥は震災遺構の門脇小学校=10日午後、宮城県石巻市

災害関連死を含む2万人近い犠牲者、2500人を超す行方不明者を出した東日本大震災から、きょうで12年を迎えた。犠牲者の冥福を祈りつつ、復興への思いを新たにしたい。

復興支援の若者が移住

岸田文雄首相は政府・与党連絡会議で「被災者の声をしっかり受け止め、『東北の復興なくして日本の再生なし』の強い決意の下、政府・与党一丸で復興に取り組む」と述べた。

かつて経験したことのない巨大津波で多くの人命と財産が奪われた。そこからの復興は、まずは現実の生活を平常に戻すことから始まり、それだけでも容易なことではなく、多くの困難を伴った。その努力によって今の東北がある。インフラは復旧し、産業もかなりのところまで甦った。これから求められるのは、日本の未来を先取りし、日本再生のモデルとなるような東北の復興である。原状復帰ではない創造的な復興だ。

ハイテク産業、農林水産業などの新しいスタイルの産業創造がその中心となる。そしてその主役となるのは、若い力だ。東北に生まれ育った若い人たちが、新しい発想で故郷の潜在力を生かした新しいビジネスに取り組む姿は頼もしく、何より希望を感じさせる。また東北復興に関わり、そのまま東北に移住した若い人たちが地元の人々の中に溶け込みながら、新しいライフスタイルを開拓している姿は、日本の未来の方向性を示唆するものだ。

東北地方も震災以来、人口減が続いているが、インフラの復旧など生活基盤が整えられた土台の上で、これからは若い人たちを招き入れることにもっと力を注ぐべきである。地元の自治体はもとより、政府も東北移住を呼び掛けるなど、本格的な支援をすべきだ。日本が抱える最大の課題の一つは少子高齢化問題であり、東北を問題解決のモデルとすべきである。

復興の歩みは着実に実を結んでいるが、東京電力福島第1原発事故の影響で福島県の人々を中心に、今も3万人余の人々が避難生活を送っている。

渡辺博道復興相は「関係者の尽力により復興は着実に進んでいる一方、地域によって状況はさまざまだ。特に原子力被災地域では、いまだふるさとに帰れない多くの方々が避難生活を余儀なくされている。国が前面に立って中長期的に対応していく必要がある」と強調した。

原発立地地区の双葉町でも昨年8月、ようやく全町避難が解除された。解除エリアは町の15%で、震災前の約6000人だった人口も、現在は60人にすぎない。しかし、もともと自然にも恵まれた地域だ。核となる人々がいれば、必ず往時の賑わいを取り戻す日が来るはずだ。

風評被害防止に尽力を

福島第1原発では、処理水の海洋放出が夏頃までに始まる予定だ。原子力規制委員会が安全性に問題はないと認めている。問題は、地元漁業協同組合が懸念する風評被害だ。政府は風評被害が出た場合の水産物買い取りなど対策を準備しているが、それ以上に安全性を周知することが重要だ。科学的根拠を示し、風評発生を防ぐキャンペーンに力を入れるべきである。