英不法移民対策を批判 国連、EU 「難民政策の精神に抵触」

英仏海峡を渡る途中、英当局に救助され、英国に 上陸する移民たち=2021年11月、英南部ダンジネス(AFP時事)

【パリ安倍雅信】英スナク政権が打ち出した不法移民対策は、欧州連合(EU)人権法や国連の難民政策の精神に抵触するとして、国内外から批判を受けている。

英公共放送BBCによると、スナク首相は移民を阻止する新法を導入するために、「戦う準備ができている」と主張。「厳しいが、必要かつ公正な措置を巡る法廷闘争に勝つと確信している」と述べた。

新法の発表を受けて、野党は強く反発。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も、新法は「亡命禁止」に相当すると強い懸念を表明した。不法移民を「数週間以内に」強制送還する新法が施行されれば、命懸けで海峡を横断してきた不法移民は、強制的にルワンダなど、第三国に送還されることになる。政府はあらゆる対策が成果を挙げなかったことを導入の理由に挙げている。

小船でたどり着いた不法移民は、2018年に約300人だったが、22年には4万5000人に膨れ上がった。フランスは英国の要請でフランス側沿岸の取り締まりを警官を増員して強化したが効果は上がっていない。

UNHCRによれば、世界中で1億人以上の人々が避難を強いられている。UNHCRは英政府が提出した法案について難民条約に「明らかに違反」していると述べ、「権威主義の国のやり方だ」と非難した。