【社説】クアッド外相会合 中露両国への牽制強めよ

3日、ニューデリーで、日本、米国、オーストラリア、インド4か国の連携枠組み「クアッド」外相会合後にパネルディスカッションに出席した(左から)ブリンケン米国務長官、林芳正外相、ウォン豪外相、ジャイシャンカル印外相(AFP時事)

日本、米国、オーストラリア、インド4カ国の連携枠組み「クアッド」は、インドで外相会合を開催し、海洋進出を強める中国を念頭に一方的な現状変更の試みに強く反対するとともに、国際法に従ったウクライナの恒久的な平和が必要だという認識で一致した。他国の主権侵害を容認できないのは当然である。

侵略への反対を確認

会合には林芳正外相、ブリンケン米国務長官、ジャイシャンカル印外相、ウォン豪外相が参加した。共同声明では、ウクライナ侵略を続けるロシアを名指しした非難は避けつつ「核兵器の使用または威嚇は許されない」と強調。侵略に反対する姿勢を改めて確認した。

日米豪は、ロシアとの関係も重視し、制裁に加わらないインドを引き寄せ、対露圧力を強化することを目指している。その意味で残念だったのは、林氏が今回の会合に先立って行われた20カ国・地域(G20)外相会合を国会対応のために欠席したことだ。

日本は今年の先進7カ国(G7)、インドはG20の議長国であり、欠席はG20軽視とも受け取られかねない。これではインドを動かすのは難しい。岸田文雄首相は今月後半にインドを訪問し、モディ首相との首脳会談を行う方向で調整しているが、インドとの連携強化に尽力しなければならない。

 G20外相会合は、ロシアの侵略を巡る文言にロシアと中国が合意しなかったため、共同声明を出さずに閉幕した。侵略は明白な国際法違反であるにもかかわらず、国連安全保障理事会常任理事国の中露両国が国際社会の結束を乱し、法の支配をないがしろにしていることは実に許し難い。

クアッド外相会合の共同声明では、東シナ海や南シナ海への進出を強める中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の維持を再確認。「現状変更や緊張を高めようとするいかなる一方的行動にも強く反対する」と表明した。クアッドをはじめとする民主主義陣営は、覇権主義的な行動を強める中国と侵略を続けるロシアへの牽制(けんせい)を強めるべきだ。

中国では国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が開幕した。今年の国防予算案は1兆5537億元(約30兆5600億円)で、経済成長目標の5%前後を上回る前年比7・2%増となった。日本の防衛予算案(約6・8兆円)の4・5倍だ。

政府活動報告は、2027年の軍創立100年に向け「習近平強軍思想」の貫徹や「訓練と戦争準備」の強化方針を訴えた。台湾問題では「『独立』反対・祖国統一促進を貫き、祖国の平和統一への道を歩む」と明記。「平和統一」は19年を最後に報告から消えていたが、4年ぶりに復活した。中国の脅威が一段と増大したと言える。

 安保協力を深化させよ

今年1月には、インド空軍の戦闘機「SU30」が茨城県小美玉市の航空自衛隊百里基地周辺で空自のF15やF2戦闘機と迎撃戦闘訓練などを行った。

これも中国を念頭に置いたものだ。日米豪はインドとの安全保障協力を深化させていく必要がある。