
車いすテニスの第一人者として活躍し、四大大会とパラリンピックの全てを制する「生涯ゴールデンスラム」を達成した国枝慎吾さんに国民栄誉賞が授与されることが決まった。パラスポーツ選手の受賞は初となる。
先駆者、国枝さんの業績を称(たた)えたい。そして後に続くパラアスリートの大きな励みとなることを期待したい。
「生涯ゴールデンスラム」
国枝さんは9歳の時に脊髄腫瘍で車いす生活となり、11歳からテニスを始めた。高校1年の時の海外遠征で、当時世界トップクラスの選手の活躍を見て世界の頂点を目指すことを決意したという。
四大大会制覇はシングルス28回、ダブルス22回の計50回で歴代最多。パラリンピックは2004年アテネ大会に始まり、08年北京、12年ロンドン、21年東京の各大会のシングルスと、計4個の金メダルを獲得した。
そして22年のウィンブルドン選手権で初優勝し、「生涯ゴールデンスラム」を達成。世界ランキング1位で、今年1月に現役引退を表明した。
松野博一官房長官は記者会見で「パラスポーツの社会的認知度の拡大、スポーツの発展に極めて顕著な貢献をし、広く国民に夢や感動を、社会に明るい希望や勇気を与えた」とその業績を称えた。
国枝さんは、車いすテニスばかりでなく、日本のパラスポーツの第一人者、シンボル的な存在だ。日本において決して認知度が高いとは言えなかったパラスポーツを、国民に知らしめる上で、その活躍は大きなものがあった。
受賞について国枝さんは「大変光栄に思うとともに、身が引き締まる思いだ。(受賞が)パラスポーツ界の更なる発展につながることを祈念する」とのコメントを発表している。
多様性、調和、共生をテーマにした21年の東京パラリンピックでは、日本選手団が金メダル13個、銀15個、銅23個の好成績を収めた。開会式や閉会式の素晴らしいパフォーマンスもあって、パラスポーツへの関心を一気に高めた。
選手たちの生き生きとしたパフォーマンスは、スポーツの喜びと力を改めて知らしめた。パラリンピックの成功を打ち上げ花火で終わらせるのではなく、その成果を今後も育てていく必要がある。国枝さんの国民栄誉賞受賞はその意味でも重要だ。
栄誉賞授与は、国枝さんに続くパラアスリートへの励みになることは言うまでもない。それとともに、さまざまな障害を抱えて生きる人たちにも大きな励みになるに違いない。
さらに特別なハンディを抱えていない人たちにも勇気を与えるものであり、自身を顧みる鏡ともなる。ハンディを抱えながらも、前を見つめ、目標に向かってひたむきに努力を続ける姿には誰もが感動する。思うようにいかないと、つい後ろ向きになる自分を恥ずかしく思った人もいるだろう。
活躍の陰に家族の支援
パラアスリートの活躍の陰には、家族やサポートする人たちがいることも忘れたくない。国枝さんの受賞は、周りで支えてきた人々の受賞でもある。



