パレスチナ自治区で銃撃テロ、2人死亡 止まらない暴力の連鎖

ユダヤ人入植者らが報復、家や車に放火 ネタニヤフ政権、入植進行か

イスラエル治安部隊と衝突するパレスチナ人ら=2月22日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ナブルス(AFP時事)

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ナブルス近郊の町フワラで2月26日、イスラエル人を狙った銃撃テロがあり2人が死亡した。一方、ユダヤ人入植者らが報復でパレスチナの町を襲った。イスラエルとパレスチナの暴力の応酬が激しさを増している。(エルサレム・森田貴裕)

事件当時、ユダヤ人入植地につながる国道60号は渋滞しており、銃撃者はイスラエル人の車に近づき、至近距離から銃弾12発以上を発射した。

フワラでは、これまでもイスラエル人の車に対する銃撃事件がたびたび発生している。入植者がパレスチナの町を通らなくても済むようにバイパス建設の計画はあるものの、工事は進んでいない。

事件の後、ユダヤ人入植者約400人がフワラに押し掛け暴動を起こした。入植者らは26日夜、パレスチナ人の家や車に次々と火を放った。

パレスチナ保健当局によると、銃撃でパレスチナ人1人が死亡、火災の煙でパレスチナ住民100人が負傷したほか、刃物で刺されるなど2人が負傷した。入植者3人も負傷した。パレスチナ自治政府のアッバス議長は、「ユダヤ人入植者によるテロ行為だ」と非難。「全責任はイスラエル政府にある」と述べた。

イスラエルのネタニヤフ首相は、入植者らに冷静になるよう求めた上で、「イスラエル軍と治安部隊が現在、銃撃犯を捜索している」と述べ、暴力で報復しないよう呼びかけた。

エルサレム旧市街で13日、パレスチナ人少年(14)がナイフを使ってイスラエル人青年を襲撃し負傷させた。東エルサレムの検問所でも同日、バスに車内検査のため乗り込んだ警官がパレスチナ人少年(13)にナイフで刺され、一緒に乗り込んだ民間の警備員が放った銃弾がその警官に当たり死亡した。

ヨルダン川西岸では、イスラエル軍による対テロ急襲作戦が続けられている。ナブルスで2月22日に実施された武装組織「ライオンズ・デン」への急襲作戦では、民間人を含めパレスチナ人11人が死亡し、400人以上が負傷した。

イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区からは、イスラエル軍の急襲作戦に反応してロケット弾が発射され、イスラエル軍もハマスの軍事施設を空爆するなど、暴力の連鎖は止まらない。

今年これまでに、パレスチナ側は民間人を含め少なくとも62人が死亡し、イスラエル側は13人が死亡した。

暴力の応酬が続く中、ヨルダン南部アカバで26日、イスラエル、パレスチナ、ヨルダン、エジプト、米国の当局者らによる緊急会合が開かれた。報道によると、会合後にヨルダンが発表した声明では、イスラエル側は新しい入植地の承認を6カ月間停止し、パレスチナ側はテロ活動を阻止するための治安協力を再開することで合意した。また、3月にエジプトで会合を再び開き、双方の協議を続けるという。

ただ、出席したイスラエルのハネグビ国家安全保障顧問は、「イスラエルは入植の凍結や入植政策の変更に同意しなかった」と述べており、イスラエル極右政党党首のスモトリッチ財務相も、「入植の凍結は1日たりともない」と明言している。イスラエルは今後数カ月で、ヨルダン川西岸に無許可で建設された入植地9カ所を合法化し、既存の入植地で9500戸の住宅建設を承認する予定だ。

パレスチナではイスラエルを敵視する教育が行われている。パレスチナ教育省が昨年9月に発行したイスラム教育の本では、敵と戦うのは義務であり、殉教は天国入りを保証すると教えている。このような教育方針が改まらない限り、テロ攻撃が繰り返されるのは必然だ。

イスラエル史上最も右寄りと言われるネタニヤフ政権は相次ぐテロ攻撃を理由に、報復措置としてさらに入植を進める可能性がある。