【上昇気流】(2023年2月25日)

都庁と東京都議会議事堂

かつて国会よりも活気に満ちた地方議会があった。「福祉のミノベ」ともてはやされた学者知事、美濃部亮吉・革新都政下の東京都議会である。議員の議会質問は「事前通告」が慣例だったが、野党・自民党はしばしばそれを破った。

業を煮やした都幹部の一人が「バーン」と力いっぱい机を叩(たた)いて「その質問は、事前通告してないじゃないか」と怒鳴り、これに対して自民議員は「通告していないと質問できないのかッ! 知事、机を叩いて答弁しろッ」と迫る場面があった。

このやりとりに青ざめた美濃部知事はヒョロヒョロと立ち上がり、演壇のマイクに喋(しゃべ)りかけるように「僕は嫌ですよ、叩かないで答弁しますよ」と述べ、「気概が足りない」のヤジを浴びた。国政とは攻守所を変えた革新自治体の議会風景である。

目下、開催中の都議会では風景が変わった。小池百合子知事の所得制限なしの子育て支援策を共産党が絶賛していた。昔は「高所得者に回す金があるなら、貧乏人に手厚くしろ」と唱えたものだが。自民党と言えば「自助」の声がか細い。左右そろって宗旨替えか。

美濃部都政は「バラマキ福祉」で大赤字を抱え、財政破綻寸前に陥った。当時、保革相乗りで異色の船橋求己・京都市長はこう言ったものだ。「やれんことはできませんわ。市民の負担は市民がちゃんと負担してもらわんと自治体はつぶれますわ」。

こんな声は今、聞こえてこない。バラマキも皆で渡れば怖くない、か。