【社説】ウクライナ侵攻1年 ロシア勝たせぬ支援の継続を

ウクライナを電撃訪問したバイデン米大統領(写真右から二人目)とウクライナのゼレンスキー大統領(写真左から二人目)=2月20日(UPI)

ロシアがウクライナに軍事侵攻して1年がたった。北、東、南の3方から本格的に進撃を開始した明らかな侵略にもかかわらず、プーチン露大統領は教書演説で「戦争を始めたのは西側諸国」と述べた。黒を白と言いくるめる正当化は断じて許されない。このような国際秩序破壊は、全世界の安全を脅かすことになる。ロシアが撤退するまでウクライナを支援すべきだ。

「特別軍事作戦」が破綻

プーチン氏はウクライナでの戦争について、欧米など西側諸国からの「祖国防衛」と主張。このようなすり替えをするほど失敗を重ねている。当初、数日で首都キーウを占領しゼレンスキー政権を転覆するとした「特別軍事作戦」が破綻し、国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除などかつてなく強力な対露制裁を招いた。

欧州をはじめとする国際社会は避難民の受け入れなど人道支援を積極的に行い、北大西洋条約機構(NATO)諸国から武器供与を受けたウクライナ軍が、ロシア軍を食い止め、反撃に転じている。ロシアはウクライナ東部のルガンスク、ドネツク、ザポロジエ、ヘルソンの4州を一方的に併合宣言し、虐殺など支配地域での戦争犯罪は目を覆うものがある。一刻も早い解放を期待したい。

この状況に戦術核使用の危険を煽(あお)るようなプーチン氏の発言は、大いに懸念のあるところだ。米国との新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を発表し、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)実戦配備など核戦力増強を強調しており、思わしくない戦況を核恫喝(どうかつ)で挽回しようとする焦りもあろう。

問題なのは2014年のクリミア半島併合で、核戦争を含む「第3次世界大戦」の脅しに民主主義諸国は弱いとプーチン氏が脳裏に刻んだことだ。ロシアの侵略はクリミア併合から始まったという認識をNATOのストルテンベルグ事務総長が示したように、領土拡大を既成事実化したら次の侵略を始めるのが今のロシアであることを昨年来の軍事侵攻は証明した。

しかし、プーチン氏が非難するNATO東方拡大は、主権国家の意思と法的手続きを経て民主的になされたものとロシアは理解しなければならない。米国のバイデン大統領は、電撃的にキーウを訪れてゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナ国民を勇気づけて「キーウは自由のままでいる」と訴えた。ポーランドの首都ワルシャワでは「決してロシアの勝利にならない」と演説した。

ゼレンスキー氏のロシアを止められるのは武器だけだという理屈は現実そのものだ。米国のリーダーシップとNATOをはじめとする国際的な結束によってウクライナを支援していくことは、ますます重要である。

欧米の武器で目標貫徹を

これまで米国や欧州諸国などが供与した対戦車ミサイル「ジャベリン」、155㍉榴弾(りゅうだん)砲、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」、戦闘車両、攻撃型戦車などの武器がロシア軍を止めている。一方で、戦闘の烈度をいかに低下させていくか難しい調整もあるが、ロシアを勝たせない目標を貫徹すべきだ。