2022年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・2%増、年率では0・6%増と2四半期ぶりのプラス成長になった。
ただ、物価高や海外経済の減速などが重しとなり、成長は力強さを欠いている。今後の持続的成長には、物価高を上回る賃上げを通じた内需の拡大が欠かせない。
物価高で内需に弱さ
10~12月期のGDPがプラスに転じたのは、新型コロナウイルス禍からの経済回復が進んだこともあるが、外需が輸入の減少によりGDPにプラスに寄与した面が強く、喜んでばかりはいられない。
確かに、コロナ禍による行動制限がなくなり経済活動の正常化が進んだことで、内需の柱である個人消費が前期比0・5%増と3期連続のプラスとなった。ただ、政府の観光需要喚起策「全国旅行支援」に支えられて宿泊などのサービス消費は好調だったものの、物価高による節約志向の高まりで飲料や衣料品などの消費は低迷した。
内需のもう一つの柱である設備投資は、海外経済減速を背景に半導体装置などへの支出が減少して0・5%減と3期ぶりのマイナス。住宅投資、公共投資もマイナスで、内需全体ではGDPへの寄与度がマイナス0・2%となり成長を押し下げた。
一方、外需の寄与度はプラス0・3%で輸出、輸入ともプラスに寄与したが、中身は数字ほど良くない。輸出は統計上、輸出にカウントされるインバウンド(訪日客)消費が増加したこともあって1・4%増と5期連続でプラスになったが、減少傾向が続く。
プラスに寄与した輸入(0・4%減)も、7~9月期に急増した海外企業への広告料支払いの減少という一時的な要因のほか、内需の弱さをも反映しており、喜ぶどころか憂慮すべき状況なのである。
内需の弱さは設備投資のように海外経済の減速という要因もあるが、ロシアのウクライナ侵攻の長期化による資源高の継続や円安による物価高の影響が大きい。
昨年12月の消費者物価指数は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比4・0%上昇と、41年ぶりの高い伸びである。昨年2万品目を超えた歴史的な食品の値上げは依然としてやまず、今月も5400超の品目で予定されている。
岸田文雄首相が年頭の会見で表明し、連合が今春闘で目標に掲げた「物価高を超える賃上げ」「5%程度の賃上げ」が求められる所以(ゆえん)である。
大手企業では、そうした賃上げを表明する企業も少なくないが、労働者の7割を占める中小企業でどこまで「物価高を超える賃上げ」が波及するか。中小企業庁の調査では、賃上げの前提となるコスト増の価格転嫁の動きが鈍く、予断を許さない。
輸出に下押し圧力続く
資源高や円安が一服しても、世界経済の減速で輸出には今後も下押し圧力が続きそうで、当面、輸出に景気の牽引(けんいん)力は期待できない。持続的な成長には大幅な賃上げが実現するかどうかがカギを握っている。



