
トルコ南東部で6日に起きた大地震による犠牲者数が拡大している。死者数は隣国シリアと合わせ4万人を超えた。トルコの被災地では行方不明者の捜索活動が続く一方で、治安悪化の懸念が高まっている。(エルサレム・森田貴裕)
トルコ南東部で6日未明、マグニチュード(M)7・8の地震が発生。同日午後にもM7・5の余震が発生した。トルコ国内では、10県が地震の影響を受け、約2万5000棟の建物が倒壊して住民が瓦礫(がれき)の下敷きになった。
トルコ政府からの要請により、これまで82カ国以上が支援に乗り出し、支援部隊9000人以上が被災地に派遣された。各国の救助隊の懸命の捜索活動で、多くの生存者が救出されている。14日時点で、トルコの救助隊も合わせ24万9000人以上が被災地で捜索活動を行っており、トルコの災害緊急事態対策庁(AFAD)によると、約19万6000人が被災地域から避難した。
隣国のシリアの死者数は5800人以上とされている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、シリア北西部に住む530万人が、家を失った可能性があるという。
イスラエルからは、軍の救助部隊150人が6日に派遣された後、15機の空軍輸送機により大量の支援物資と共に、医療支援部隊230人が派遣された。ボランティアも含め450人が被災地で活動を行い、外国からの支援部隊としては、アゼルバイジャンの725人に次ぐ人数となった。
イスラエルのネタニヤフ首相は6日、シリアに対する支援の要請を受けたとして、「シリアにもテント、医薬品、毛布などの支援物資を送る計画がある」と表明した。ところがシリア政府当局者は、イスラエルに支援を要請した事実はないと強く否定した。イスラエルとシリアは敵対関係にあるが、10年以上に及ぶシリア内戦による民間人の犠牲者にイスラエルは医療支援を行っている。
日本政府も6日、トルコ政府からの要請で国際緊急援助隊・救助チーム75人の派遣を決定。第1陣18人が7日夜からカフラマンマラシュ県の被災地に入り活動を開始。11日には、日本の医療チームが被災地入りして医療活動を始めた。
各国からの救援活動が続く中、エルサレムに拠点を置く緊急医療ボランティア組織「ユナイテッド・ハツァラー」は12日、トルコ大地震の被災地の治安悪化の懸念から、当初10日間だった支援活動の期間を切り上げ、早期にイスラエルへ帰国すると発表した。
イスラエル軍は12日、治安悪化の懸念とは別に、救助隊の捜索活動を終了すると発表した。医療部隊はトルコ国内にとどまり医療支援を継続するという。
オーストリア軍とドイツの民間救助隊は11日、被災地の治安状況が悪化しているため、捜索活動を一時停止したと発表した。オーストリア軍のスポークスマンは、「救助隊間で衝突があった」と述べ、兵士82人がベースキャンプに避難し、指示を待っているという。
トルコのアナトリア通信によると、トルコ警察当局は11日、被災地での強盗や詐欺などの容疑で少なくとも98人を逮捕し、銃やライフルなどを押収した。
トルコ国内では、地震で約2万5000棟の建物が倒壊するなどした。トルコでは長年、多くの建物が安全ではないと専門家らが警告を発してきた。適切に建てられていたならば倒壊はしなかったはずだと、専門家らは指摘する。トルコ当局は12日、大地震による建物の倒壊に関連し、建築基準法に違反した建設業者など113人の逮捕状を出し、少なくとも12人の身柄を拘束した。
トルコでは、1960年代から建設ブームを促進させるため、安全基準に満たない建物の施工業者に対し、行政処分免除が実施されてきた。今回の大惨事は、人災と言える。
トルコのエルドアン大統領は、地震への対応の不備を認めている。大統領選が5月14日に予定されている。20年間政権を担ってきたエルドアン氏にとって苦しい選挙になりそうだ。



