【社説】少子化対策 児童手当より非婚化対策だ

少子化を巡る国会での議論はもっぱら児童手当の見直しに集中しているが、これが有効な対策となるとは思われない。少子化の最大の原因である非婚化・晩婚化を防ぐ、文字通り「異次元」の施策が必要だ。

減少続く年間結婚数

少子化対策を最重要政策と位置付ける岸田文雄首相は、児童手当などの経済支援強化や幼児教育などの拡充、働き方改革などの議論を進めるよう指示。政府は3月末にも少子化対策のたたき台をまとめる方針だ。

現在児童手当は、年収1200万円以下を対象に、子供1人当たり月1万~1万5000円が中学生まで支給されている。所得制限を廃止する案や、支給期間を高校生まで引き伸ばすなどの案が出ている。

児童手当の見直しについては、かつて旧民主党政権の所得制限廃止を野党の自民党が「ばらまき」と批判した。その自民を含め与野党問わず、4月の統一地方選を前に気前のいいところを見せようとしてか、見直しにかなり前のめりだ。

しかし、これが出生率を高める有効な手立てとなるとは思われない。出生率そして年間80万人を切った出生数を高めるには、最大の原因である非婚化・晩婚化をいかに解決するか、この問題に真正面から取り組む以外にない。

1年間の結婚数は、2019年の「令和婚」で一時的に増加して以来、減少している。その理由は男女によって微妙に異なるが、男性の場合、経済的理由が大きい。児童手当や子育て支援の拡充は出生率を少しは高める可能性はあるが、その一方で結婚したくても経済力に不安があり結婚できず、子供を持つことができない人々と社会を二極化させてしまう恐れすらある。

日本財団が18歳前後の若者約1000人を対象に行った調査では、「将来子供を持ちたい」という回答は59%で、必ずもしくは多分「持つと思う」との答えが46%で、その障害について69%が「金銭的負担」、54%が「仕事との両立」を挙げた。

今の若者の意識を知る上で参考になるが、このような回答が出てくる背景には、結婚、子育てはとにかくお金のかかることとの「刷り込み」があるように見える。

結婚数の減少は経済的な理由もあるが、それ以上にこうした先入観や価値観の多様化を背景にした結婚や家庭の価値の揺らぎがある。

終戦後、多くの男性が家庭に戻り沢山(たくさん)の子供が生まれ、爆発的ベビーブームとなった。当時、日本は占領下にあり、みな貧しく食料事情も悪かった。しかし平和な社会の中で、結婚生活や子育てすることの喜びは何物にも勝った。これは一時的な異常事ではなく、極限状況の中でかえって人間の自然な在り方が示されたものと言える。

家庭の価値の再確立を

岸田首相は「子育てに関する社会の意識変革を目指すことが、次元が異なる子供子育て政策だ」と述べている。出生率を反転させるような意識改革を目指すのであれば、結婚や子育てなど家庭の価値を再確立することこそ、いま求められているのではないか。

政府は14日、日銀正副総裁人事案を国会に提示した。新執行部は、元日銀審議委員で理論派の経済学者である植田和男次期総裁を、金融庁と日銀出身の2人の副総裁が実務面で支える構図となる。「バランスの取れた絶妙な人事」(政府関係者)との声が上がる中、新執行部は10年にわたって続いた異次元金融緩和の正常化に取り組む。