北核問題解決の秘策

「クロス承認」の完成で

北朝鮮が核兵器に固執するのは第一に「体制維持」だが、それと密接に関連しているのが米国による国家承認すなわち国交正常化だ。しかし米国は北朝鮮が核を放棄しない限り、承認どころか交渉も行わない。

北に核を諦めさせるために国際社会は「制裁」を用いているが、中国という大きな抜け穴があってまったく効果がない。北朝鮮は昨年だけでも「大小71発のミサイル」を撃ち、7次の核実験が迫っているとまでみられている。

つまり現状では北核問題はまったく進展しないどころか、解決のめどすら立たず、北朝鮮が名実ともに「核保有国」になるのを座して見ているしかない。

北核問題を解決するのは「クロス承認」だと主張するのは元韓国国防次官、国会議員も務めた白(ペク)承周(スンジュ)国民大学客員教授である。新東亜(2月号)でその理由を述べている。

北朝鮮が核兵器開発を決意したのは米中国交正常化がきっかけだった。金日成主席はそれを伝えに来た銭其琛中国外相の言葉を聞き、沈痛な表情でしばらく熟考した後に、「われわれは自主路線を歩む」と答えたと伝えられている。核開発を決意したのだ。

白氏は昨年12月、在ソウルの中国大使館に設けられた故江沢民主席の焼香所を訪ねて、ふとその考えが浮かんだという。クロス承認とはそれまで国交のなかった韓国と中国・ソ連(現ロシア)が正常化するのと同時に、同じく北朝鮮が日本・米国と修交するという案だ。しかし韓ソは1991年に、韓中は92年に国交を結んだものの日米はまだ北朝鮮と国交正常化していない。クロス承認は未完成なのだ。

白氏は徐(ソ)仁擇(インテク)グローバルピース財団会長の話を聞いた。徐氏は「統一を実践する人々」という非政府組織(NGO)を導いている。徐氏は白氏に「北核問題を単独で解決しようとすれば永遠に解決策は見つからない。韓半島統一と連係して解決策を講じなければならない」と語ったという。ただし条件は「北の核放棄意思とプロセス公開」である。

この案に北朝鮮が応じてくるかは未知数だが、日米から国家承認を得て、体制が保証されるならば、金日成主席が決意し3代にわたって執着してきた「核保有国」を目指す理由はなくなる。

尹(ユン)錫悦(ソクニョル)大統領が昨年8月15日に北に示した「大胆な構想」の中にクロス承認の完成はなかった。「大胆」であれ「異次元」であれ取り掛かってこその構想である。尹政府の対北政策が注目される。

(岩崎 哲)