【社説】北方領土の日 返還への決意いま一度明確に

43回目の「北方領土の日」を迎えた。歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の北方四島は日本固有の領土だ。だが1945年にソ連が占領し、現在も不法な占拠が続いている。歴代政権はソ連およびその後継のロシアと交渉を重ねてきたが、4島返還は未(いま)だに実現していない。

改憲で割譲禁じたロシア

ロシアのプーチン政権は、2020年7月に憲法を改正し領土割譲を禁じる条項を盛り込み、21年9月には北方領土に経済特区を創設する構想を打ち出すなど実効支配の姿勢を強めている。北方領土に地対空ミサイルを配備したり、大規模な軍事演習を繰り返したりするなど軍事的な威嚇も増している。

さらにウクライナ侵略後、ロシアは日本の経済制裁措置に反発し、北方領土のビザなし渡航合意を破棄、領土問題の存在を否定したり平和条約交渉打ち切りを仄(ほの)めかしたりするなど態度を一層硬化させた。ロシアの「力による現状変更」に自由主義諸国が反発、対決姿勢を強める中、今年は先進7カ国(G7)議長国を務める日本がロシアに接近し、領土交渉を進めることも難しい。

しかし、決して断念してはならない。近い将来、交渉環境が好転する可能性がある。過去、交渉が前進を見たのは、ソ連やロシアが経済的苦境に陥ったり国際的に孤立したりした時だ。1998年4月、静岡・川奈での日露首脳会談でロシアのエリツィン大統領が領土問題解決に強い意欲を見せたのも、また73年10月、訪ソした田中角栄首相に対し、ブレジネフ書記長がそれまで否定していた領土問題の存在を認めたのも、共に日本の経済支援を必要とする事情があったからだ。

いまロシアはウクライナとの戦争で苦戦を強いられ、国力を大きくすり減らしている。日本に再び秋波を送ってくる日は遠くない。その好機を捉え、日本主導の下で交渉を再開させるべきだ。また、国際世論を取り込むことも必要だ。今こそ、ウクライナと同様、ロシアに領土を不法占拠されている日本の現状を世界に発信し、ロシアの不当性とわが国の主張の正しさを訴え、国際世論を味方に付ける絶好の機会と言える。

もっとも交渉進展には、強い指導者がロシアに存在しなければならない。日本への領土返還を国民に納得させ、不満を抑える必要があるからだ。プーチン大統領の指導力には既に陰りが出ている。今後の交渉戦略を考える上で、日本はポスト・プーチンも視野に入れるべきだ。

交渉力高める努力を

領土問題解決には、長い歳月を要する。それ故、腰を据えて交渉に臨む心構えが求められる。日本人の気短な性格や淡泊な国民性は、領土問題では禁物だ。返還を諦めれば、わが国の主張の正当性や国際正義を自ら否定することになる。

何年かかろうとも、4島返還を求めロシアに食らいついていく粘り強さ、そして国際世論を巧みに取り込み、また同盟国から支援を引き出し、自らの交渉力を高める努力が日本には必要だ。この日を、北方領土返還への決意と覚悟をいま一度明確にする日としたい。