【社説】首相秘書官更迭 同性婚論議と分けて考えよ

性的少数者(LGBTなど)や同性婚を巡って差別発言をした荒井勝喜首相秘書官が更迭された。

差別が許されないのは当然である。一方、荒井氏の発言と同性婚に関する論議は分けて考える必要がある。

性的少数者への差別発言

荒井氏はオフレコの取材に応じ、性的少数者などに関して「見るのも嫌だ。隣に住んでいたらやっぱり嫌だ」と語った。「同性婚なんか導入したら、国を捨てる人も出てくる」とも述べた。性的指向や性自認を理由とする差別は根絶すべきであり、政府高官による不適切で配慮に欠けた発言は遺憾である。

その後、荒井氏は陳謝し発言を撤回したが、岸田文雄首相は「政権の方針とは全く相いれず言語道断だ」と述べた。更迭を急いだのは、多様性尊重の方針に反する発言は容認しないとの立場を示し、これ以上の内閣支持率低下を避ける狙いだろう。

一方、野党は政府・与党に対する攻勢を強める構えだ。同性婚を巡っては、首相が今国会で法制化について「極めて慎重な検討を要する」と繰り返し答弁している。

立憲民主党の泉健太代表は、この答弁の背後に「秘書官の存在があったのではないか」と指摘。安住淳国対委員長は党会合で、今国会中に法制化などを実現させるべきだとの考えを示した。しかし、荒井氏の発言と同性婚制度の導入は全く別の問題である。

現在、同性婚を認めないことは憲法違反だとして、同性カップルらが国に損害賠償を求めて全国で訴訟を起こしている。札幌地裁は2021年3月に違憲と判断。これに対し、大阪地裁は22年6月に合憲、東京地裁は11月に違憲状態とするなど司法判断も分かれている。

札幌地裁は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」と定めた憲法24条を「異性婚について定めたもの」としながらも、同性婚が認められないことは憲法14条が定めた「法の下の平等」に照らし違憲とした。

一方、東京地裁は、伝統的に婚姻が男女間で認められてきた背景に「夫婦となった男女が子を産み育て、家族として生活し、次世代につなぐという役割があった」と言及。婚姻の可否を異性間と同性間で区別するのは合理的な根拠があるとして、憲法14条にも違反しないとした。ただ、同性カップルが家族になる法制度がないことについては違憲状態としている。

結婚制度を考える上で最も重視すべきは子供の福祉である。しかし子供の生まれない同性婚が法制化され、養子を迎えることを可能とした場合、本来であれば父母によって育てられるべき養子に与える影響が強く懸念される。

戦後の日本社会では個人主義が蔓延(まんえん)する中、結婚でも子供のことを念頭に置かず、当人同士のみの幸福を求める風潮が強まっている。同性婚の法制化を要求する動きも、こうした流れから生じたと言えよう。

憲法に「家族条項」創設を

一夫一婦制の伝統的家族を守るには、憲法に「家族条項」を創設し、結婚は男女間のみに認めると明確に定めるべきだ。