消えゆく老舗温泉ホテル 韓国から

毎年今の時期は一年で最も寒く、温泉旅行に出掛けるにはもってこいだ。韓国でも温泉はなかなかの人気で、入り方は日本と基本的に変わらないが、垢(あか)すりに精を出したり、45度くらいはありそうな「熱湯」と呼ばれる湯船と水風呂を往復したり、長時間サウナで汗を絞ったりと、どちらかといえばワイルド系だ。とはいえ近年は韓国も飽食になったせいかおなかが出ている人が結構いて、最近太り気味の筆者でも気後れ(?)せずに入れる。

だが、その温泉街もこの3年ですっかり様変わりしてしまったようだ。新型コロナウイルスの影響で客足がすっかり遠のいてしまい、廃業に追い込まれるホテルが相次いでいる。特に1970年代に人気ナンバー1の新婚旅行先だった中部の儒城温泉では大型ホテルの廃業が目立つ。創業100年を超える最も老舗の「儒城ホテル」もついに来年の廃業が決まり、往年のファンから惜しまれているという。

この「儒城ホテル」は統治期に住み着いた日本人が掘り起こした温泉が始まり。近くにある別の温泉ホテルのルーツにも日本人がいた。

これらのホテルは李承晩や朴正熙など歴代大統領がたびたび訪れたことでも知られる。90年代に営業時間の制約がない「観光特区」に指定されたが、温泉や宴会場頼みの旧来型経営では集客が伸びず、コロナがこれに追い打ちを掛けた。「古き良き韓国」がまた一つ消えていくのはちょっぴり寂しい。(U)