米本土に中国「偵察気球」 核ミサイル基地情報 収集か

【ワシントン山崎洋介】米国防総省は2日、米本土上空を飛行している偵察気球を発見し、監視と追跡を続けていると発表した。ブリンケン国務長官が5日から訪中する見通しの中、米中対立の新たな火種になる可能性がある。

国防総省のパトリック・ライダー報道官は、「気球は現在、民間の航空機よりはるかに高い高度で飛行しており、地上の人たちに軍事的、物理的な脅威を与えることはない」と説明。同様の偵察気球は、過去数年間にわたって観測されているという。

監視気球はアリューシャン列島上空やカナダを通り、1日には北西部モンタナ州で発見された。米国防総省高官は記者団に、気球が中国のものだと「確信している」と強調。気球を撃墜することを検討したが、破片が地上に被害をもたらす可能性があり、実施しないことを決めたという。

同州には、核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)が配備されているマルムストローム空軍基地がある。国防総省高官によると、気球の飛行経路は機密性の高い施設の上空を多く通過しており、監視目的であることは明白だという。ただ、同高官は「偵察気球が情報収集衛星を通じて得られる以上の大きな付加価値をもたらすことはない」とも指摘した。

米下院中国特別委員会の委員長を務める共和党のギャラガー議員と同委員会で民主党トップのクリシュナムルティ議員は2日の共同声明で、「米国への主権侵害」だと批判。バイデン政権に対し「この脅威に対抗するために行動すべきだ」と要求した。

偵察気球の追跡を公表した2日、米政府はフィリピン政府と米軍が使用可能なフィリピン国内の軍事基地の数を増やすことで合意している。

ブリンケン氏の訪中では習近平国家主席との会談が見込まれている。バイデン米大統領と習氏は昨年11月に会談し、緊張緩和に向けた対話継続で合意しているが、偵察気球をめぐる議会の反発などもあり、融和姿勢を示すことは困難になる可能性がある。