【社説】日本とNATO インド太平洋での連携強化を

岸田文雄首相は北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と会談した。

ロシアがウクライナへの侵略を続け、中国とロシアが連携を強める中、NATOはインド太平洋地域の民主主義国との協力強化が必要だとしている。日本はNATOとの関係を深化させるべきだ。

台湾問題「平和的解決を」

首相は共同記者発表で「『自由で開かれたインド太平洋』実現を含む国際秩序の維持・強化のため、協力をさらなる高みに引き上げると確認した」と説明。ストルテンベルグ氏は「われわれは結束し、断固として自由と民主主義のために協力を進めなければならない」と述べた。

両首脳は共同声明を発表し、中国の急速な軍事力強化と軍事活動拡大に対して、透明性向上と軍備制限・軍縮に協力するよう強く促した。日本とNATOの共同文書で、中国の軍拡に関する記述が盛り込まれたのは初めてのことだ。

首相は昨年6月、NATO首脳会議に日本の首相として初めて出席した。首脳会議では、今後10年間の行動指針を示す「戦略概念」を12年ぶりに改定し、覇権主義的な動きを強める中国に初めて言及。日韓などとの連携強化を打ち出した。昨年11月の自衛隊と米軍による共同統合演習「キーン・ソード」には、NATOの武官をオブザーバーとして招いた。

日本がNATOとの関係を強化する背景には、台湾有事への危機感がある。専門家の間では、中国は2027年までに武力で台湾統一に動くとの見方が強まっている。今回の共同声明では、台湾情勢について「海峡の平和と安定の重要性」を強調し、平和的解決を促した。

日本が米国との同盟に加え、NATOと連携を強化すれば、中国に対する抑止効果を高めることが期待できる。法の支配などの価値観を共有する日本とNATOは、力による一方的な現状変更を試みる中国やロシアへの包囲網を築く必要がある。

会談では、首相が在ベルギー日本大使館が兼ねるNATO政府代表部を独立させるほか、NATO参謀長会議などへの定期参加を検討する考えを伝えた。ストルテンベルグ氏は7月にリトアニアで行われるNATO首脳会議に首相を招待した。

首相は昨年6月のNATO首脳会議に合わせ、日本と共に招待された韓国、オーストラリア、ニュージーランドに呼び掛けて4カ国首脳会談を初開催した。この枠組みは「アジア太平洋パートナー国」と呼ばれるが、NATOはもちろん、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」や、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」などとの連携も求められよう。

ストルテンベルグ氏は来日に先立ち、韓国を訪れて尹錫悦大統領と会談した。ウクライナ危機を受け、欧州では日韓両国との関係の重要性を再評価する動きが出ている。

日韓は関係改善急げ

北朝鮮の核・ミサイル問題や中国による台湾への軍事的威嚇に対処する上で、日韓両国の存在は重要だ。日韓は地域の安定に寄与するため、関係改善を急がなければならない。