【上昇気流】(2023年2月1日)

トヨタ自動車(Wikipediaより)

トヨタ自動車の新社長に就く佐藤恒治氏(53)。オンライン記者会見で「車の本質的な価値を守り、新しいモビリティーのかたちを提案したい。新たな時代に向けて挑戦する」と語った。その言や良しである。

車を移動する手段としてだけ捉えるのでなく、新しい価値を付与するイノベーションに取り組むべきだ。時代への鋭い感性を持った有能な若い人材をどんどん登用し、ものづくりの世界で起こったデジタル化でも優位を保ってほしい。

若い世代の活躍できる場の提供につながる、もう一つのニュース。世界有数の総合的な基礎科学の研究所である理化学研究所(本部・埼玉県和光市)が、若手研究者の給与を最大2割引き上げるなどの若手支援策を発表した。この4月に導入する。

また優秀な若手を登用するポストを拡充し、部長級ポスト(任期7年)に性別不問の2人と女性1人の計3人を採用する。日本の研究力が低下する中、研究に専念できる環境を整え優秀な人材を確保するのが狙い。

ただ支援策の一方、人材を社会に送り出す側の大学の教育体制について不十分だという声が小さくない。『失敗学のすすめ』などの著書でも知られる工学博士の畑村洋太郎氏もその一人。

畑村氏は「自分自身で状況を把握し、自分なりの考えをつくることができる教育」(『技術大国幻想の終わり』)を強調し、「座学」を中心とする今の教育カリキュラムの限界を指摘する。大学改革が急務だ。