政府は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5月8日に、現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることを決めた。社会正常化への転換点となることが期待されるが、重症化リスクの高い高齢者などへの対策に重点を置くべきだ。
依然として強い感染力
新型コロナは、国内の感染確認から3年が経過した。ワクチン接種などによって重症化率や致死率は低下したが、依然強い感染力を持っている。高齢者や持病を持つ人は重症化のリスクがあり、「怖い感染症」であることは変わらない。
岸田文雄首相は「家庭、学校、職場、地域のあらゆる場面で日常を取り戻せるように着実に歩みを進めていく」と述べた。新型コロナの特性に留意し、メリハリを利かせた対策が必要だ。
特に、高齢者や糖尿病、高血圧などの持病を持つ重症化リスクの高い人々への対策が重要になってくる。5類への移行によって感染のリスクが高まる可能性がある中、いかにこうした人々を守っていくかが課題だ。
昨年11月以降の死者は2万人に達したが、9割を70歳以上が占める。老人ホームや介護施設など、これまで以上に感染予防に注力しなければならなくなる可能性もある。国や自治体のきめ細かい支援策が求められる。
5類に移行すれば、感染者や濃厚接触者の自宅待機がなくなり、緊急事態宣言などによる行動制限もなくなる。声援を伴うスポーツやコンサートなどのイベントの収容人数制限も27日をもって撤廃された。
一方、感染者の医療費公費負担は当面維持し、段階的に自己負担を導入する方針だ。ワクチン接種については、公費で負担する。病院への診療報酬なども見直し、3月上旬に具体的な方向性を示すという。
感染者数は全数把握から、特定の医療機関からの報告に基づく「定点把握」に簡素化される。政府の対策本部会議では、オミクロン株と大きく病原性(重症度)が異なる変異株の出現などの場合は「直ちに対応を見直す」と新たな方針に明記した。変異株の監視態勢を構築し、柔軟に対応することも必要だ。
マスクについては「着用は個人の判断に委ねることを基本として検討する」とし、参考のために「マスクの着用が効果的な場面」を国民に周知するとしているが、混乱も予想される。現在、屋外では基本的に不要とされているのに、ほとんどの人が着用している。より明確なメッセージが求められる。
教育現場では、重症化リスクの低い学生や生徒もマスクを着用してきた。感染予防にはなったが、コミュニケーションの質は下がった。早く、教育現場での脱マスクを進めるべきだ。
政府は医療現場の支援を
入院や治療など医療の受け入れについては、これまで発熱外来や指定医療機関に限られていたものが、一般医療機関でも可能となる。
受診できる医療機関の拡大が期待される一方で、院内の感染対策など課題も大きい。政府は医療現場の実態を正確に把握し、適切な医療体制の構築をサポートする必要がある。



