【上昇気流】(2023年1月29日)

日本列島は強い冬型の気圧配置で、日本海側は大雪に見舞われ、積雪が平年の数倍に上っている所もある。それに対し、太平洋側は晴天だが、気温が低く風が冷たい天候である。朝のゴミ出しなどの時は特に底冷えを実感する。

東京でも雪の予想がされたが、実際には降る気配はあまりない。たとえ降っても北国のように高く積もることはほとんどないと言っていい。だが、いったん降れば積雪で交通機関がマヒしてしまう場合がある。

東京は昔からそれほど雪が降らないようで、明治44年の若月紫蘭著『東京年中行事1』(昭和43年、朝倉治彦校注で平凡社刊行)によれば「東京に於て雪らしい雪の降るのは、矢張り一月の中旬(なかば)頃から二月一ぱい位のものである。そしてそれも五、六寸という所が大抵関の山」とある。

若月は山口県防府市生まれで、大学では夏目漱石の授業を受けたことがある。教職の道を歩んだが、新聞記者も経験している。東京の年中行事に関心を持ったのは、案外東京生まれの人は東京のことを知らないということもあったようだ。

最初に、この本を俳人に向けて、その次に東京を知らない地方の人、そして「東京に在りて東京を知らざる人」に書いたと述べているからだ。地元の人には耳の痛い話だが、正当な指摘でもある。

もともと東京は、江戸幕府を開いた徳川家康によって何もない所から開拓されて発展した都市。地方人の若月が東京の行事を書いても不思議ではない。。