【ワシントン山崎洋介】米政府は25日、ロシアによる侵攻が続くウクライナに主力戦車「エイブラムス」31台を供与すると発表した。ドイツも主力戦車「レオパルト２」の提供を決めたばかりで、米欧諸国が一致してウクライナの反転攻勢を支援する姿勢を明確にした。欧米によるウクライナへの武器支援は、新たな段階に入った。
バイデン米大統領はホワイトハウスで演説し、「ウクライナは近い将来、自らの土地を解放するため、ロシアの戦術や戦略に対抗できるようにする必要がある」と戦車供与の意義を強調。また「米国は同盟・友好国と協力し、ウクライナを支援するためできる限りのことをし続ける」とも訴えた。
ウクライナへのエイブラムス供与について、バイデン政権は、ウクライナ軍が運用、維持することは困難だとして、当初否定的な考えを示していたが、方針を転換させた。ロシアが春にも大規模な攻勢をかけることが予想されているが、米高官によると、今回供与するエイブラムス戦車は新たに調達するため、戦場に到着するのは数カ月後になる見込みだ。ウクライナ軍が運用するために訓練の実施も必要になる。
旧ソ連時代の兵器に大きく依存しているウクライナは、戦車の提供を繰り返し要求してきた。米メディアによると、米国はドイツに対してレオパルト２を供与することを求めたが、ドイツ側は米国がエイブラムスを供与しなければ、応じないと主張してきた。一方で、ポーランドは、保有するレオパルト２のウクライナへの供与の許可をドイツに求めるなど、北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）加盟国の間でも足並みの乱れが生じ始めていた。
こうした中、米議会では、バイデン政権に対して戦車の供与を急ぐよう与野党からの圧力が高まっており、先週、民主・共和両党の議員らがウクライナを訪問。その後、民主党のブルメンタール上院議員は「われわれはエイブラムスを提供する必要がある。そうすれば、ドイツはレオパルト２を提供するだろう」と主張していた。
ウクライナへの武器支援の強化を求めてきた共和党議員らは、今回の決定を歓迎するとともに、さらなる取り組みを促した。同党のマコネル上院院内総務は「バイデン政権の決定は遅きに失したものの重要だ」と一定の評価をしつつ、「西側諸国の仕事はまだ終わっていない」と述べ、さらなる支援を求めた。
