日本は原潜の保有を 対中抑止と水中戦のカギに

元海上自衛隊潜水艦隊司令官

日台の交流を促進する民間団体「日本李登輝友の会」は21日、都内で講演会を開いた。登壇した元海上自衛隊潜水艦隊司令官で元海将の矢野一樹氏は「原潜(原子力潜水艦)は世界最強の武器体系の一つを構成している」と語り、中国や北朝鮮といった安全保障上の脅威に対応するためには、原潜が必要不可欠との認識を示した。また、技術、費用、法律それぞれの面から日本が原潜を開発・保有することは可能とした上で「必要なのは政府の政治的決断のみだ」と強調した。

原潜は原子力発電を内蔵することで、通常動力型潜水艦(通常潜)と違って電池消費を考慮する必要がない。そのため、長期間の連続潜航と水中における高い機動力、捜索能力、隠密性をもつ「水中戦のカギ」となる。これに加えて矢野氏は、現在の中国海軍は原潜に対応するには力不足とし「米同盟側の水中優位がある限り、中国は戦争の敷居を越えることができない」と重要性を訴えた。

一部専門家が原潜は通常潜に比べて雑音が大きいと指摘していることについては、「今では通常潜よりはるかに静かな原潜が存在している」と力説した。

原潜については現在、米国、ロシア、中国など6カ国が保有しており、日本の周辺ではオーストラリアや韓国のほか北朝鮮も保有を目指している。矢野氏は、原潜保有国が増えつつある国際社会において「通常潜しか保有していない日本の抑止力は限定的」と警鐘を鳴らした。