
【パリ安倍雅信】フランスで19日、政府が進める年金改革に抗議する大規模デモが全国で行われ、約112万人が参加した。パリのレピュブリック広場には8万人以上の参加者が集まり、一部が暴徒化し、機動隊と衝突した。さまざまな分野から抗議デモに参加者が加わり、パリでは地下鉄駅やエッフェル塔も閉鎖された、教員が抗議運動に加わったため、一部学校も閉校となった。
マクロン仏政権は、世界的に最も低いとされる退職年齢62歳を64歳に引き上げる措置を含む、年金制度の全面的改革を計画している。同改革プログラムの取り下げを要求する労働組合、鉄道、学校、製油所などの幅広い業界の労働者が抗議運動に加わった。少子高齢化で2044年までに英国は67歳を68歳、ドイツは現在の67歳を70歳に引き上げることを検討中だ。
今回のデモには、年金を受給している高齢者や20代の若者も加わった。「これから年金を受給する人が、さらに数年長く働かなくてはならないのは受け入れられない」とデモに参加した年金受給者の78歳の女性は言い、「年金はかなり先の話だけど、その時代に70歳まで働くことになったら大変だ」と参加した大学生は抗議の声を上げた。
フランスは日本同様、現在働いている人が退職者の年金を支えており、21年の死亡数と出生数の差による「自然増減」は8万1000人で、仏国立統計経済研究所(INSEE)の推定予想の増減値を下回った。今後、確実に増える高齢者に対して、実際に支払う若い労働者が減少していることから、年金制度の持続可能性に懸念が指摘されている。次の全国レベルのストライキは31日を予定している。



