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今年、東北北部の白神山地がユネスコの世界自然遺産に登録されて30周年を迎える。約8千年前から残存する東アジア最大の原生的なブナの森林だ。野生生物の宝庫でもある。周辺地域には縄文遺跡も多く、古くから山と人との関わりも深かったことがうかがえる。マタギと呼ばれる地域の人々の生活の場でもあった。
持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる目標の一つが「陸の豊かさも守ろう」だ。地元紙で今月、西目屋村のガイド団体「白神マタギ舎」の小池幸雄さん(57)が「白神では1万年以上も前からSDGsな暮らしがあったと言える」と語っている。
小池さんは神奈川県出身。弘前大学卒業後マタギとして修行を積んだ。山の恵みを神からの授かり物と考えるマタギの精神性や命に敬意を払う儀式、森を保全することの大切さなど、各地で講演や出前授業で伝えている。
今、白神山地では課題が多い。その一つが地球規模で進む温暖化で、冷涼な気候に適したブナの生育環境への影響、そして生態系の変化が考えられる。シカの定着による山の裸地化の可能性もある。山と人との関わり方においても、ごみの放置などが後を絶たない。
結局、人間が問題で、その点、マタギの知恵は貴重だ。しかし、山地全域がマタギによる狩猟が禁猟されたことから、マタギ文化が消失するという結果にもなっている。SDGsな暮らしの原点として残したい文化だ。
(荘)



