交通政策審議会(国土交通相の諮問機関)は、赤字が続くローカル鉄道の再編に向け、対応策を盛り込んだ中間取りまとめ案を大筋で了承した。
国の関与を強化し、沿線自治体や鉄道事業者と再編協議に入る仕組みを創設するよう求めたのが柱。国は関係者の意見集約に努めるとともに、ローカル線を地域活性化に生かす戦略を構築すべきだ。
国交相が再編協議会設置
中間取りまとめ案では、利用が低迷するローカル線の再編協議の仕組みとして、自治体や事業者の要請を受け、国交相が組織する協議会を設置すると明記。関係者の合意形成に向けた支援を求めた。これを受け、国交省は23日召集の通常国会に地域公共交通活性化再生法などの改正案を提出する。
ローカル線を取り巻く状況は厳しい。分割・民営化前の旧国鉄時代は全国で約2万㌔あったが、利用者の減少で2000年以降では全国で私鉄を含め45路線、1100㌔余りが廃線となった。これまでJRは、都市部の稼ぎを地方に回す「内部補助」でローカル線を維持してきたが、人口減少や新型コロナウイルス禍で難しくなっている。
国交省の検討会は昨年7月、利用客が少ない路線について、鉄道会社や沿線自治体に加えて国も関与し、見直しを協議する仕組みを創設するよう提言。1㌔当たりの1日平均利用者数(輸送密度)が1000人未満の区間が対象で、こうした路線の場合、自治体が鉄道施設を保有し、事業者が運行する「上下分離方式」を導入して存続を図ることや、バスへの転換などが選択肢となる。
ただローカル線を巡る協議会などが発足しても、その後難航するケースが出ている。JR芸備線(広島県-岡山県)では、沿線自治体が「利用促進以外の議論はしない」としてJR西日本との話し合いを拒んだ。
JR東・西日本のローカル線沿線住民約1万人に対する野村総研の調査では、75%が最寄り路線を「ほぼ利用しない」と答えたにもかかわらず、52%は「地域住民の心の支え」だと回答した。不採算路線でも地域のシンボルとしての価値は大きいことがうかがえる。国や事業者は、こうした住民の気持ちに十分に寄り添うことが求められる。
国交省は「協議会は廃線の結論ありきではない」と強調している。それぞれの地域の状況にもよるが、国の視点からローカル線を地域活性化のために活用する戦略も打ち出してほしい。
政府は来年度から、赤字のローカル鉄道を街づくりと一体的に見直す自治体に対し、事業経費全体の実質7割強を支援する方針を固めた。支援を希望する自治体には事前に計画の策定を求め、街づくりや観光戦略との関連性を明確化することなども補助の要件とする。日本を観光で訪れ、ローカル線に魅力を感じる外国人も多い。観光振興にも生かしたい。
有事の際の重要インフラ
さらに、鉄道は有事の際の重要なインフラでもある。青函トンネルや瀬戸大橋も有事を念頭に造られた面がある。ローカル線の問題は、こうした観点からも考える必要がある。



