大地震に備え県と陸自が共催
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沖縄県と自衛隊第15旅団が共催する災害対処訓練「美ら島レスキュー2022」が11日から3日間の日程で行われた。沖縄での大地震とそれに伴う津波の発生を想定し、情報収集から意思決定までの一連の図上訓練が県庁を中心に実施されたほか、宮古島では陸自が警察や消防などと連携し、人命救助や炊き出しなどの実動訓練を行った。(沖縄支局・豊田剛、川瀬裕也、写真も)
宮古島では初の実動訓練
在沖米軍の姿見られず
美ら島レスキューは、県内防災関連機関の連携強化と災害対処能力向上を目的として2012年度から行われており、今年で9回目。当初は自衛隊主催の訓練だったが、17年度から県との共催となっている。
玉城デニー知事は、普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対の取り組みを国内外に周知する活動の一環で京都に出張中のため、訓練を欠席した。予定では米軍は「オブザーバー参加」となっているが、訓練現場に米軍の姿は見られなかった。関係者によると、知事は、日米両政府による南西防衛強化や政府が進めている沖縄へのミサイル配備の動きを警戒しているため、「米軍を招かないという政治的判断をした」のだという。

目玉となる図上訓練は12日午前10時、県庁内に響いた訓練の館内放送と共に始まった。訓練開始直後、県庁から約250㍍離れた場所にある南部合同庁舎には県災害対策本部が立ち上げられた。
震災の第一報を受け、県庁では池田竹州副知事を中心として第1回災害対策本部会議が開催された。池田副知事は県の基本方針として、県職員の安否確認および災害応急体制の構築を指示。災害対応については人命最優先で取り組むこと、一部の局や課に偏ることなく全庁的に対応するよう呼び掛けた。
南部合同庁舎の災害対策本部では県職員を中心に、インフラ班や医療班、避難所・物資支援班などが随時状況に合わせて対応に当たった。また自衛隊をはじめ、警察や消防、海保なども連携を取り、要救助者の有無や被災状況の確認などを行った。
美ら島レスキューは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で3年ぶりに実施された。医療関係者は、コロナ患者の罹患(りかん)状況や隔離場所の確保、クラスターの把握など、これまでなかったシミュレーションに追われていた。
午後に開かれた第2回災害対策本部会議では各部署が対応状況などを共有した。会議後、池田副知事は、各部署が資料をそのまま読み上げるなどの報告をしたため、会議が長引いた点を指摘。伝達事項を1分弱に集約していた陸海空自衛隊の報告を例に挙げ、「情報の共有を限られた時間内で行い、次の対策に繋げるのが(会議の)一番の目的だ」と述べ、緊急時の時間感覚を持って会議に臨むよう指示をした。
また、宮古島では、初の実働訓練が行われた。即時救助訓練として、漁港でドローンによる漂流者捜索や、ボートによる救助の訓練を実施した。海上保安庁と警察が合同で漂流者を救助し、港で患者搬送を引き継ぐ一連の流れも確認した。
訓練は、沖縄本島南東沖3連動地震が発生し、県内各地で震度5弱から6強の揺れを観測、沖縄本島および先島諸島に10㍍前後の津波が押し寄せる想定で行われた。沖縄県は過去100年、大地震による被害を受けていないが、2010年には沖縄本島南東沖の琉球海溝でマグニチュード7・2の地震が発生している。また、22年には、震度1以上を観測した回数が153回と過去29年で最も多く、全国でも9番目に多いことが分かった。大型地震への備えは常に必要不可欠だ。
陸自第15旅団が年頭飛行 2年ぶり報道公開
およびCH-47(右側2機)と、並行飛行するLR-2(左下)=13日、沖縄本島周辺海域.jpg)
陸上自衛隊第15旅団(那覇駐屯地)は13日、年頭編隊飛行訓練を実施した。隊員の士気高揚と航空安全祈念を目的に毎年行われているもので、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年ぶりの報道公開となった。
訓練には、救難ヘリコプターのUH―60が2機と大型輸送ヘリCH―47(チヌーク)3機の計5機が参加し、航空自衛隊那覇基地を離陸した後、隊列を組んで沖縄本島周辺空域を約50分にわたり飛行した。途中、井土川一友旅団長を乗せた連絡偵察機LR―2も合流し、一定時間並行飛行した。訓練を行った第15ヘリコプター隊は隊員輸送などの任務に加え、離島などからの緊急患者空輸も担っており、昨年4月には搬送件数が1万回に達した。
第15旅団は、昨年政府が閣議決定した防衛力整備計画に、人員や規模を拡大し「師団」に格上げする方針が盛り込まれた。今後、南西諸島防衛や民生支援における自衛隊の存在感は増すであろう。



