【上昇気流】(2023年1月17日)

イナゴの佃煮

元日に放送されたNHKの「混迷の世紀『2023巻頭言 世界は平和と秩序を取り戻せるか』」に登場したフランスの経済学者で思想家のジャック・アタリ氏は、ロシアのウクライナ侵攻によって今後、人類史上最大の食料危機が発生し15億人に影響すると指摘した。

さらに食料自給率38%の日本は、危機的な状況となると警告。農業人口も減っており、今後は農家を育成し農業を魅力的なものにしなければならないと言う。

そこまでは、特に目新しい印象は受けなかった。しかし、アタリ氏が「昆虫や雑草を調理して食料にしたり、肉を食べるのを極端に減らして、食生活を変える」ことを提唱したのには、少し驚いた。

昆虫食に関心が集まっていることは知っていたが、アタリ氏に勧められるとは思わなかった。世界には、昆虫を重要なたんぱく源として食べている人々は結構いる。

日本で知られているのは、蜂の子やイナゴの佃煮など珍味の部類に限られる。しかし最近は、昆虫食をこれからの重要な食料として実用化させる動きが起きている。読売新聞の16日付朝刊によると、NTT東日本がベンチャー企業と組み、食料不足の解決策として世界的に注目されている食用コオロギの生産支援に乗り出す。その企業はコオロギを粉末化し、菓子などに加工する商品開発を行っているという。

昆虫食の普及は簡単とは思えないが、食料事情の変化を見据え、消費する側も意識を変える必要がありそうだ。