【上昇気流】(2023年1月1日)

初詣

「元日や一系の天子不二の山」(内藤鳴雪)。明けましておめでとうございます。今年の干支(えと)は癸卯(みずのとう)。ウサギ年で、多産な性質から子孫繁栄、跳ねて動くことから運勢的には跳躍・飛躍の年に当たる。

昨日が一年を集約した大みそかであるように、元日のきょうは一年のスタートを切る重要な日でもある。とはいえ、そう簡単には切り替えはできない。そのために、新しい気持ちで出発をする習俗である初詣がある。

帰省して氏神である近所の神社に参拝することは、先祖が伝統的に守ってきた習慣である。何か分からないけれど、お参りをすると気分が一新するのは、そうした見えない過去からのつながりがあるからだ。

平安時代末期から鎌倉時代にかけて活躍した歌人の西行が、伊勢神宮を参拝し、「なにごとのおはしますかはしらねどもかたじけなさになみだこぼるる」という歌を詠んでいることはよく知られている。西行は出家した僧侶だったが、そう詠まざるを得ないものがあったのだろう。日本人の心に伝わる宗教的な精神文化を実感する歌と言っていい。

俳句の歳時記では、1月は「初日」「初富士」「初空」など「初」が付く季語が多い。時間的な区切り、一年の初めを意識しているからだ。

「光陰矢の如(ごと)し」ということわざもある。何もしなければ、新しい一年もあっという間に過ぎ去ってしまう。今年は良い年であるように祈りたい。小紙を引き続きよろしくお願い申し上げます。