
今年2月、ロシアはウクライナに軍事侵攻した。国内では参院選応援演説中に安倍晋三元首相が暗殺された。国葬儀が実施されたが、事件の解明は進まず、容疑者は異例に長い精神鑑定留置のまま年を越す。容疑者は母親が高額献金した宗教団体への恨みから事件を起こしたとされ、教団批判報道が過熱、国会で政局化した。一方、サッカーワールドカップで日本代表はドイツ、スペインを破る大金星。露軍侵攻は物価高騰をもたらし、安保政策は反撃能力保有など大転換した。(肩書は当時のまま)
①安倍元首相、銃撃受け 死亡 国葬を実施
7月8日午前11時半ごろ、奈良市の近鉄・大和西大寺駅前で参院選の応援演説中の安倍晋三元首相が銃撃され死亡した。逮捕された山上徹也容疑者は手製の拳銃で犯行に及んだが、発射された銃弾数は特定されておらず、致命弾も見つかっていない。また救急医と解剖医(警察側)の死因に対する所見が異なり、複数犯説も出るなど、真相究明は十分になされていない。
岸田文雄首相は事件後、首相経験者では1967年の吉田茂氏以来55年ぶりとなる国葬の実施を表明。9月27日に日本武道館で執り行われ、国内外からインドのモディ首相など約4200人が参列した。会場付近の九段坂公園に設けられた一般向けの献花台には長蛇の列ができ、2万5千人以上が訪れた。
一方で国葬反対を訴える人々が式典と同時刻に国会正門前で集会を開き、太鼓を叩(たた)くなどして国葬を妨害する場面もあった。
②旧統一教会への批判 報道過熱、政局化
安倍晋三元首相の銃撃事件後、山上徹也容疑者が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みから安倍氏を狙ったとの供述を奈良県警が流したことでメディアの関心は旧統一教会に集中。教団への訴訟を担当する全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の弁護士や批判的なジャーナリストが連日マスコミに登場し、教団批判報道が過熱した。
首相は自民党と教団との関係に対する批判世論の高まりと共産党など野党の反発を受けて、党と教団および関連団体との絶縁を表明。国会では連日、自民党議員と教団との接点が追及され、不適切な答弁を繰り返した山際大志郎経済再生担当相は事実上更迭された。永岡桂子文部科学相は宗教法人法に基づく「質問権」を創設後初めて行使。国会では、悪質な寄付勧誘・要求を禁止し、法人などに家族の生活維持などへの配慮義務を課す新法を成立させた。
③反撃能力保有へ、安保政策転換
政府は敵のミサイル基地などを攻撃する「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有や、防衛費を国内総生産(GDP)比2%に倍増することなどを盛り込んだ新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の「安保3文書」を閣議決定した。軍事活動を活発化させる中国や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮など、厳しさを増す東アジアの安全保障環境を踏まえた対応で、戦後の安保政策における大転換となる。
政府は今後、国産の「12式地対艦誘導弾」の長射程化や、米国製巡行ミサイル「トマホーク」購入を進める。反撃能力の行使は、現行の安保関連法で定める「武力行使の新3要件」に基づき実施。国会承認が必要で、対象は「軍事目標」に限定し、詳細は明示しない。防衛費増額に対し首相が一部を税金で賄うと表明し大きな論争となったが、自公両党が合意し来年度の税制改正大綱に盛り込まれた。



