
首傾げる論調の乖離
岸田政権は「防衛3文書」を閣議決定し、ダイナミックな安保政策変更に踏み切った。ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾に対する露骨な威嚇、さらに核武装に大きく踏み込みミサイル発射を繰り返す北朝鮮など、きな臭い東アジアの安全保障に対応したものだ。
これに対し、海外の反応は米中が好対照を見せた。米紙ウォールストリート・ジャーナルは16日付社説(電子版)で、「戦後平和憲法の枠組みを抜本的に変えた(内政上の)革命だ」と高評価した。一方、中国は「中国の脅威を口実とした軍拡だ」と猛反発。中国外務省の汪文斌副報道局長は16日、「日本は事実を無視し、根拠なく中国を中傷しており、断固として反対する」と表明した上で「中国の脅威を誇張し、自国の軍拡の口実とする試みは成功しないだろう」と述べた。
パックスアメリカーナに挑戦する中国という状況を考えると、米中の反応が好対照をなすのは不自然なことではない。ただわが国で、相反する米中同様の論調の乖離(かいり)があるのには首を傾げざるをえない。3文書の閣議決定を受け、大手新聞社の社論は二つに割れた。日経、読売、産経が基本的に賛同し、朝日、毎日、東京が東アジアの安全保障リスクが高まっていることに理解を示すポーズを取りながら、その足を引っ張ろうとする。



