
先進国の間では、ロシアの侵略を受けるウクライナの復興支援に向けた動きが活発化している。日本もこれまで他国の復興で培ってきた知見、経験を生かし、積極的に貢献することが望まれる。
パリで国際支援会議
パリではこのほどウクライナの人々を支援するための国際会議が開催され、日本からは吉川有美外務政務官が出席。70以上の国と機関が参加し、約10億ユーロ(約1450億円)に上る支援が集まった。
支援金は水や食料など複数の分野に割り当てられ、エネルギー分野には4億1500万ユーロ(約600億円)が充てられる。ウクライナでは、ロシアによるエネルギー関連施設の攻撃で多くの市民が電力供給を受けられない状態に陥っている。本格的な冬を迎える中、各国が緊急支援を行うのは当然である。
これとともに、長期的な復興を見据えた支援も求められる。吉川氏は、来年の先進7カ国(G7)議長国である日本が、国際社会と緊密に連携してウクライナの人々に寄り添った支援を行っていく考えを示した。パリではウクライナとフランスとの2国間会議も開かれ、両国政府とフランスの民間企業約700社は鉄道や橋の再建などに関する総額1億ユーロ(約145億円)の契約を締結した。
10月にベルリンで開かれた国際会議では、ドイツのショルツ首相が「21世紀の新たなマーシャル・プラン」が必要と強調。第2次大戦後の米国による欧州復興支援になぞらえ、巨額の援助への協力を訴えた。復興費用は100兆円規模とも言われているが、G7を中心に各国が結束して復興支援の枠組みをつくれば、平和への強い願いと侵略を断じて容認しないとの決意を示すことにもなろう。
岸田文雄首相はベルリンの会議にビデオ声明を寄せて「日本独自の知見と強みを生かしたウクライナ支援を行っていく」と表明した。東日本大震災からの復興におけるがれきの分別や再利用の技術などを活用し、貢献する必要がある。
一方、ウクライナはかねて政財界や司法の汚職体質が指摘されてきた。現在も供与された武器や物資、支援金が適切に管理されず、一部が私腹を肥やすために使われるとの懸念も浮上している。
こうした腐敗は各国の不信を招くだけでなく、ロシアの侵略正当化にも利用されかねない。国際社会に支援を求める以上、ウクライナは汚職の根絶に努めなければならない。
ただ、侵略によって汚職の一因だったウクライナの新興財閥(オリガルヒ)の資産が破壊され、政治的影響力も弱体化した。今回の戦争は、ウクライナが腐敗を一掃するチャンスだとの見方も出ている。
経済面のバックアップも
ウクライナ軍は夏以降、ロシアの支配地域で反転攻勢を仕掛け、東・南部の一部を奪還する戦果を挙げている。
とはいえ、戦争がいつ終わるか予測することは難しい。G7をはじめとする西側諸国は、軍事面と共に経済面でもウクライナを強力にバックアップすることが求められる。



