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サッカー・ワールドカップのカタール大会は劇的なPK戦の末にアルゼンチンが36年ぶりの3度目の優勝を果たした。選手たち、スタジアムやアルゼンチンのサポーターは歓喜の涙を流す姿が多かった。しかし勝利の立役者で自身2度目の最優秀選手(MVP)に輝いた主将のメッシ選手に涙はなく、終始晴れやかな笑顔を見せていた。
母国の英雄マラドーナと比較され、ワールドカップ優勝が悲願だったメッシ選手。PK戦で見せた驚くべき冷静さに象徴されるように、試合中は常にチームが勝つために自分のプレーに徹した。これが本当のリーダー、英雄の姿ではないかと思わされる。
前半アルゼンチンに2点リードされ、延長戦後半でもリードを許し、もう決まったかと思う中で、フランスが追い付くという、まさに筋書きのないドラマだった▼そんな試合に惜敗したフランス選手たちも多くが悔し涙を流した。しかし、フランス代表のエース、エムバペ選手は、メッシ選手と同じく涙を見せなかった。
スタンドで応援していたフランスのマクロン大統領も試合後ピッチに下りて、エムバペ選手の肩を抱いて慰めるシーンも流れた。しかしエムバペ選手は大統領もほとんど眼中にないようで、悔しさの滲(にじ)む目でどこか一点を見詰めていた。
メッシ選手を抑えて得点王に輝いた技量にこの悔しさが作用すれば、どんなことになるのか。いずれこの選手の時代が来るのではと予感させる決勝戦でもあった。



