新型コロナウイルスが景気を大きく左右する要因ではなくなってきた一方、原材料価格の高騰が景況回復の「重し」になっている――日銀の12月全国企業短期経済観測調査(短観)が浮き彫りにした企業の現状である。
先行きも欧米や中国など海外経済の減速懸念から不透明感が漂う。景況感が改善する非製造業も慎重で、本格回復を見通せないでいる。
大企業製造業は4期連続
企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス7と、前回9月調査のプラス8から1ポイント悪化。悪化は4四半期連続である。原材料価格の上昇が長期化して仕入れ価格が高騰しているためで、年間を通じて景況感を押し下げた。
仕入れ価格判断DIは、第2次石油危機後の1980年5月以来の高水準。価格転嫁の動きも広がっており、販売価格判断DIも調査開始以来最大の水準である。
本来であれば1㌦=150円台まで進んだ歴史的な円安は、大企業製造業、特に自動車などの輸出企業にとっては大きな追い風になるはずだったが、原材料価格高騰の長期化は販売価格への転嫁でもコスト高を賄い切れず、年間を通じて逆風となっている。
先行きも悪化を見込む。14日も米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利の0・5%引き上げを決めるなど、欧米ではインフレ対策のため金融引き締めを積極化させている。中国も「ゼロコロナ」政策の影響で経済が混乱するなど、海外経済の減速が大きな懸念材料となっているからである。
一方、大企業非製造業は3期連続で改善した。新型コロナの感染拡大を抑える行動制限の緩和のほか、経済活動の正常化、政府の旅行需要喚起策「全国旅行支援」、水際対策の緩和によるインバウンド(訪日外国人旅行者)需要の回復などが好影響を与えたからである。
ただ、先行きについては製造業同様というより、それ以上に悪化を見込む(業況判断DIが製造業の1ポイント悪化に対し、非製造業は8ポイント悪化)。原材料高騰のためで、外食や小売などでは値上げしても原材料費や電気代の上昇に追い付かず、収益が圧迫されているからである。改善傾向が続いているだけに、原材料高をよりシビアに感じているのであろう。人手不足感も強まっている。
原材料費高騰の一因になっていた為替相場の円安は、米国の利上げペースの鈍化などにより、最近は1ポイント=135円台を前後する水準で落ち着きを見せている。12月短観での全規模全産業の22年度想定為替レートも130円75銭となり、乖離(かいり)幅が小さくなってきていることは、もちろん企業側の努力もあるが、何よりである。政府・日銀には過度な変動に対して予断なく、かつ果断な対応で企業環境を整えてもらいたい。
賃上げでも一段の努力を
今調査では22年度設備投資計画で製造業、非製造業とも前年度比20%前後の高い数字が引き続き示された。旺盛な投資意欲を歓迎するとともに、経済の好循環形成に賃上げでも一段の努力を望みたい。



