
【サンパウロ綾村悟】南米ペルーの国会(1院制・定員130人)は7日、急進左派のカスティジョ大統領に対して野党が提出していた弾劾決議案を賛成多数で可決、同大統領を罷免した。同日付でボルアルテ副大統領(60)が大統領に昇格し、ペルー初の女性大統領が誕生した。
弾劾理由は、「大統領職を遂行する道徳的な能力に欠けている」というもの。罷免に必要な議会の3分の2を上回る101票の賛成票が集まった。カスティジョ氏は、昨年7月に就任したばかりだが、今回の弾劾決議はすでに3度目で、過去2回否決されていた。
一方、カスティジョ氏は、罷免を免れるため採決前に国会の一時的解散と臨時政府樹立を宣言した。しかし、国家警察は国会の解散命令は憲法に反するとして、憲法違反の容疑で同氏の身柄を拘束した。現地では、カスティジョ氏によるクーデターが未遂に終わったとの見方だ。

元小学校教師のカスティジョ氏は、マルクス主義を信奉する急進左派政党のペルー自由党から昨年の大統領選挙に出馬し、貧困層支援や資源国有化などを掲げてフジモリ元大統領の長女で保守派のケイコ氏を破り当選した。大統領就任後は、急進派の与党内で政権運営などをめぐって対立、野党が過半数を占める国会運営も行き詰まるなど政権の舵(かじ)取りは困難を極めた。
さらに、政権内では左翼ゲリラ容認発言で首相が交代するなどスキャンダルが続出、カスティジョ氏自身も、公共事業に絡む政府入札を操作して利益を得たとして、検察当局から汚職疑惑で追及されている。
ペルー国内では、政情不安が続いており、ボルアルテ氏の大統領就任は2018年3月から数えて5人目。議会内では与野党が対立しており、政情不安の解消は見通せない。国民の政治不信も強く、今年4月には全国各地で反政府デモが発生し、首都リマには外出禁止令が敷かれる事態になっていた。



