親北団体が中高生取り込み 韓国 尹政権退陣デモに勧誘

革新行政の予算で北礼賛教育 「親北新世代」形成も

韓国の革新系団体「ろうそく中高生市民連帯」が中高生に対し、尹錫悦政権退陣を求める集会に勧誘したり、革新行政の予算を使って北朝鮮礼賛の教育をしていることが明らかになり、物議を醸している。同連帯は強硬な親北勢力の影響下にあり、学生たちは無意識にそうした思想に染まる危険にさらされている。(ソウル・上田勇実)

尹錫悦政権退陣を求める集会(先月12日)への中高生参加を呼び掛ける「ろうそく中高生市民連帯」のポスター(同連隊ホームページから)

同連帯は2016年の国政介入事件で朴槿恵大統領を弾劾に追いやるため発足した中高生組織が前身で、昨年2月に現在の名称に変更した。

常任代表を務める崔ジュンホ氏は、10年に親北反米路線の極左政党・民主労働党で最年少党員として活動し、その後、同党の流れを汲(く)み、14年に利敵団体として裁判所から解散命令を受けた統合進歩党で青少年非常対策委員長を務めた経歴の持ち主だ。

韓国メディアによると、同連帯は先月、ソウルの光化門広場で「第1回尹錫悦退陣 中高生ろうそく集会」を行った際、中高生に参加を広く呼び掛けた。親北反米の偏向教育で知られる全国教職員労働組合(全教組)所属の一部教師も集会参加を学生に促したという。

また同連帯は昨年3月から4月にかけ、当時、革新政治の影響が残っていたソウル市から取り付けた約5500万ウォン(約570万円)の補助金で、北朝鮮の体制を称賛する活動歴がある人物や親北系メディア関係者を講師に呼び、中高生に北礼賛教育をしていたという。

講演は対面やオンラインによって少なくとも7回行われた。講演内容は金正恩総書記の軍事活動や朝鮮労働党大会の紹介のほか、既存メディアによる北朝鮮報道を「フェイクニュース」だとして疑問を投げ掛けたり、韓国与党・国民の力を批判するものもあったようだ。

同連帯は講演を聞いた学生に対し、内申評価時に加点対象となる「奉仕時間」を最大100時間提供することを約束したというが、同連帯は公式の奉仕活動団体として登録されておらず、奉仕時間の提供は勧誘のための詭弁(きべん)だった疑いが持たれている。地方の中高生には15人以上の団体で上京する場合、大型バスを無料手配するという“熱意”まで見せた。

昨年6月の特別講演では、病気治療のため中国に渡った後、本人の意思とは無関係に韓国入りし、北朝鮮に残された家族の元に帰ることを訴え続けている脱北女性(50代)が講師に迎えられた。国家保安法違反容疑で裁判中の女性は、北朝鮮の宣伝メディアを活用して北体制を称賛する資料を作成し、流布したとして新たに捜査を受けているという。

10代の学生を政権退陣運動に扇動したり、北礼賛の教育を受けさせるなど、同連帯の偏向的思想に父兄からは反発の声が上がっているが、「(自治体の教育行政を仕切る)教育庁に苦情を言っても、そのトップにいる教育監の多くが革新系であるため、受け入れられない」(保守系父兄団体関係者)のが実情だ。

同連帯は綱領で「社会矛盾の根は分断にあることを認識し、民族の平和統一のため積極的に行動する」とうたい、「米軍政の単独選挙以来、分断された朝鮮半島」は「独裁政権の誕生」と「親日清算の失敗」により「歴史の進歩が妨害」されたとして韓国保守派と日米を批判している。まるで北朝鮮が韓国に呼び掛けるスローガンを見ているようだ。

また北朝鮮の独裁体制に追従する日本の朝鮮学校の学生とも「交流協力を進める」と表明している。

韓国親北左派の危険性に警鐘を鳴らす保守系青年組織「新全国大学生代表者協議会」の李範席・共同議長は、同連帯についてこう指摘した。

「全教組の左翼史観に侵されやすい環境にいる中高生は、同連帯にとって絶好の攻略ターゲット。どういう活動をするにせよ最終的に親北左派的な思想を学生に植え付けるのが目的だ。いずれ新しい親北世代が形成されるかもしれない」