「鉄道と美術の150年」/東京ステーションギャラリー

触発された名作、話題作150件

東京駅の「東京ステーションギャラリー」

日本の鉄道開業から150年を記念して「鉄道と美術の150年」が東京駅の東京ステーションギャラリーで開かれている(2023年1月9日まで)。

日本の文明開化、近代化を牽引(けんいん)してきた鉄道は、画家や絵師たちの創作意欲を刺激し、鉄道を題材にした幾つもの作品が生まれた。鉄道に触発された名作、話題作など、絵画のほか写真やポスターも含めた150件を全国から集めて展示する。

赤松麟作(りんさく)の「夜汽車」は、1901(明治34)年作の油彩画。眠った子供を抱いて物思う婦人、起きてたばこを一服する老人など、夜が明け始めた車内の情景が生き生きと活写されている。脂(やに)っぽい色調からも当時の雰囲気が伝わってくる。

歌川広重(三代)「東京汐留鉄道御開業祭礼図」(1872年)は新橋―横浜間の鉄道開業式の様子を描いた錦絵。烏帽子(えぼし)に直垂(ひたたれ)姿で乗り込む政府高官の姿が面白い。小林清親「高輪牛町朧月夜」(1879年)は、蒸気機関車が高輪の築堤(ちくてい)の上を走っている絵。線路の用地買収ができなかったため、高輪の海上に築かれた築堤の石垣も描かれている。

大正から昭和初期に活躍した長谷川利行の「浅草停車場」(1926年)や機関車の車庫を描いた油彩は、鉄道が作り出した都市の新しい叙情的な風景を捉えている。ほかに1971年の「ディスカバー・ジャパン」のポスターなど、懐かしいものも多い。

(藤橋進)