海外では、たまたま口にしたものが素晴らしく美味(おい)しいと、感動が増幅される。マレーシアのクアラルンプールではバンコク同様、バイクに載せて売り歩いていたアイスクリーム屋から1本買ったアイスクリームが忘れられない。
こんなアイスクリームが世の中にあったのかと驚いた。色は黄色。日本人なら大抵、この色のアイスはオレンジアイスとなるが、オレンジアイスより実際は白みがかっている。
口にすれば一目瞭然ならぬ一口瞭然で、トウモロコシアイスだった。勝手な推測ながら、ゆでたトウモロコシをミキサーにかけてクリーム状にしたものを氷菓にしたシンプルなものだ。
コクのある甘みは、しつこくなく実に素朴でさわやかだ。後味もさっぱりしていながら、喉(のど)の渇きも癒やされるところがいい。
大抵の料理は、素材が良ければほとんど間違いがない。放射熱が半端じゃない南国の太陽に照らされて育ったトウモロコシはそれだけでも絶品だが、あえて氷の中に封印する手立てがあるとは思わなかった。
思うにこのコーンアイスの誕生は、イスラム文化と無縁ではない。禁酒を基本とするイスラム世界では、酒の代わりに豊かなスイーツを作りだした。それは酒をたしまない人が、甘いものに目がないのと同様の生理現象だろう。
1本10円のコーンポタージュのうまい棒を作った人は天才だと確信するが、コーンアイスを作ったマレーシア人も私は敬愛する。(T)



