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今年はインド独立75周年、日印国交70周年の節目の年。日本でもさまざまな行事が行われている。その記念事業の一つ、インド外務省による資金援助で刊行されたのが、ラビンドラナート・タゴールの回想記『少年時代』(めこん)だ。
タゴールはインドとバングラデシュの国民詩人。1913年、詩集『ギータンジャリ』でノーベル文学賞を受賞した。詩や小説、戯曲、歌曲などあらゆる分野で傑作を残し、近代ベンガル語の韻分・散文を確立した。
『少年時代』は最晩年の作品で「ぼくのノートは 詩でいっぱいで/教科書なんか 開きもしない。/ほんとはだあれも 知らないうちに/こっそり 家から抜け出して、/芝居の一座に 潜り込むのが/僕の夢だった―」と序詞に記す。
訳と解説は大西正幸さんによるもの。インドでベンガル文学を学んだ時、先生から教わった最初の本だったという。先生が音読し大西さんが復誦する。解釈はその後。その訓練で文体のリズムが胸に焼き付いたそうだ。
解説はタゴール家の歴史と家族たちについてだ。先祖は、厳しい戒律を守る最上位バラモンでありながら、近代化の中、東インド会社と関わりを持ち、事業に商才を発揮して莫大(ばくだい)な富を築く。
タゴールの英国留学は法律家になるよう期待されたからだが、ならなかった。『少年時代』はそこで終わる。が、自分の名ロビ(太陽)の意味を悟り、「東洋と西洋の手を結び合わせた」と結ぶ。



