フランス 石炭火力発電所再開 深刻なエネルギー不足

【パリ安倍雅信】フランス北東部モーゼル県にあるサンタヴォル石炭火力発電所が28日、再稼働を開始した。冬の停電のリスクを抑制するのが目的で来年4月までの稼働としている。同発電所は地球温暖化対策で石炭発電を優先的に停止する政策により8カ月前に閉鎖されたが、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー不足が深刻化し、再稼働となった。

同発電所は再稼働に当たり、発電所の円滑な運営を確保するために70人の従業員が呼び戻された。1日24時間発電し、約60万世帯に電力を供給することが可能になると当局は説明している。同決定に環境団体や発電所周辺の住民は強く反対する一方、時限的であれば仕方のない選択との世論が圧倒的に多い。

フランスは本来、温暖化ガス排出量が少ない原子力発電で必要電力の約70%を賄っていたが、現在は56基の原子炉中、点検調整中の原子炉が半数を上回り、供給電力は50%を割っている。

西部コルデミの火力発電所など2カ所が稼働中で、今回3カ所目が再稼働したことで段階的停止は一時後退する。

フランスは温暖化対策に積極的な半面、エネルギー安全保障の観点から2050年のカーボンニュートラル達成に向け、国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するほか、さらに8基の建設に向けて調査を開始すると2月に発表した。また、天然ガス供給の多角化にも取り組んでおり、マクロン仏大統領は8月、天然ガス埋蔵量の多い旧植民地アルジェリアを訪問している。