【社説】サッカーW杯 平和への希望与える大会に

中東で初めての開催となるサッカーの第22回ワールドカップ(W杯)カタール大会がきょう開幕する。

ロシアによるウクライナ侵略などで国際情勢が緊迫する中での開催だ。スポーツの力で平和への希望を全人類に与える大会となるよう願ってやまない。

ベスト8以上目指す日本

今大会は酷暑を避けるため、異例の11~12月に開催されることになった。7大会連続7度目の出場となる日本は、1次リーグのE組でスペイン、コスタリカ、ドイツと対戦する。ドイツとスペインを日本とコスタリカが追う形だ。森保一監督率いる日本代表の活躍に期待したい。

森保監督は代表メンバー発表の際に「ベスト8以上が目標。簡単な目標ではないが、世界の舞台で日本人一丸となって新しい景色を見たい」と決意を表明した。これまでの日本の最高成績はベスト16だ。世界中の強豪国が優勝を争う中、確かに簡単ではないが、日本代表の中にはレベルの高い欧州各国のチームで活躍する選手も多い。

特に23日のドイツとの初戦が重要だ。安定した守備力で粘りつつ、好機を着実に生かせるかが焦点となる。ドイツ戦で勝利すれば、1次リーグ突破の可能性も高まる。ベスト8以上の達成に向けて最善を尽くしてもらいたい。

大会開催が6~7月であれば約1カ月間の準備期間があるが、今回は事前の長期合宿などは組めず、ぶっつけ本番に近い。さらにシーズンを中断する欧州に配慮して大会日程が短縮され、1次リーグは中3日での連戦となる。選手の体調管理にも十分に気を使う必要がある。

カタールにとっては国家の威信を懸けた大会だ。開催関連費用は30兆円超に上るとも言われる。各会場には冷却システムが完備され、気温は22度前後に保たれる。八つの試合会場はドーハ中心部と近郊に位置し、会場間の距離は最長75㌔。移動の負担を最小限に抑えた。

それだけに、決勝戦などで観客が一斉に会場に殺到すると大混乱に陥る恐れがある。ソウル・梨泰院の大規模雑踏事故のような惨事が起きないよう、当局には厳重な警備を求めたい。

カタールはイスラム教国であり、酒は入国時に持ち込めず、公共の場での飲酒も禁止されている。日本をはじめとする国外のサポーターは文化の違いに配慮した行動を心掛けたい。

またカタールでは今月から入国時の新型コロナウイルス陰性証明の提示が不要になるなど、感染対策が緩和されている。観客が密集するため、一人一人が感染に注意する必要がある。

開幕を目前に控える中、カタールで移民労働者の人権侵害などが問題視されていることは残念だ。今大会が人権意識の向上に資することが望まれる。

閉塞感打破する一歩に

サッカーW杯は全世界に中継され、総視聴者数は35億人を超えるとされる。「平和の祭典」と言われる五輪と同様、その影響力は極めて大きい。ロシアのウクライナ侵略などで世界中に漂う閉塞(へいそく)感を打破する一歩となり、選手の活躍を見た子供たちが希望と勇気を持てるような大会を実現してもらいたい。