宗教と政治を論ずる「公明」

安易な規制の危険性訴え

自ら「宗教不信」払拭の努力を

公明党の月刊機関誌「公明」12月号は、「『旧統一教会と政治』どう糾すか」(同誌編集部)と題して、宗教と政治について整理する論考を掲載した。安倍晋三元首相銃撃事件の容疑者の供述に関する報道を受けて、岸田文雄首相(自民党総裁)が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を絶つと宣言し、政治家は過去の「接点」を謝罪した。その意図はどうであれ、多くの国民に「政治家と宗教の接触=悪」の構図とともに、政治家は宗教と距離を置くべきだという価値観が擦り込まれたことだろう。

創価学会を支持母体に持つ公明党としては、自らに飛び火する問題であり、危機感をあらわにしている。事件直後こそ、宗教と政治の関係の在り方について「捜査が進展中なのでコメントは控えたい」(山口那津男代表)と言葉を濁していたが、現在は「『政治と宗教』の問題ではなく、社会的な問題を多く抱える団体と政治家との問題ととらえるべき」(同)だと強調している。

論考は、銃撃事件後に大手紙やオピニオン誌に掲載された識者のインタビュー等を抜粋しつつ、「安易な規制は国家による思想統制にもつながりかねない。こうした危険性も認識した上で、与野党は議論を深めていくべきである」と結んだ。内容は正論なのだが、現在の世論に響いているとは言い難い。というのも、日本には正論を曇らせるだけの「宗教不信」が存在するからだ。

100以上の国と地域を対象に1981年から実施されている「世界価値観調査(WVS)」には、宗教への意識を問う項目がある。2020年3月に公表された第7回目の調査結果によると、「宗教団体の組織や制度を信頼できるか」の問いに対して、「非常に信頼する/やや信頼する」と答えた人は8%にすぎず、「あまり信頼しない/全く信頼しない」は81・3%に上った。電通総研と同志社大学が77カ国の同調査結果を比較した分析では日本の宗教への信頼度の低さは突出しており、77カ国中最下位だった。

宗教不信を招いている要因として、さまざまなものが容易に推測できるが、それらを本当に払拭(ふっしょく)できるのは宗教団体だけである。もちろん一朝一夕に変わるものではない。しかし信教の自由や宗教と政治といった基本的人権に関わる重要なテーマについて、わが国で冷静な議論が行われるためには、宗教団体自身が不信の原因を理解し、真摯(しんし)に向き合い、改革する姿勢を社会全体に示す努力を続けるしかない。

(亀井 玲那)