「辺野古」一辺倒の限界露呈

自公・共産 那覇市長選

沖縄「選挙イヤー」を総括

任期満了に伴う沖縄県那覇市長選が10月23日に投開票され、自民・公明が推薦した元那覇市副市長の知念覚氏が初当選した。玉城デニー知事が率いる「オール沖縄」が支援し、立憲民主、共産、れいわ、社民、沖縄社会大衆党が推薦した元県議の翁長雄治(おながたけはる)氏を破った。

沖縄にとって今年は県知事選をはじめ多くの選挙が行われた「選挙イヤー」だ。多くが、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対するオール沖縄勢力と、自公勢力とで争われた。オール沖縄は7月の参院選、9月の県知事選を制したものの、県都・那覇で知念氏が当選したことで七つの市長選は全敗の結果に終わった。

那覇市長選の結果やオール沖縄「全敗」について、自民、公明、共産が各機関紙で触れている。自民党機関紙「自由民主」(11・1)は2面トップで「那覇市長選 知念覚氏が初当選」「県内7市長選で全勝」との見出しで報じた。記事中では「基地問題等で政治対立に明け暮れる『オール沖縄』勢力ではなく、市民を第一に考え市政に専念するリーダーとして知念氏がふさわしいと那覇市民の意思が示された」と総括した。自民と共に知念氏を推薦した公明は、「公明新聞」10月25日付2面に「那覇市長に新人・知念氏」の記事を掲載した。

これに対して、10月25日付の共産党機関紙「しんぶん赤旗」1面では、「オール沖縄 歩み続ける」の見出しで翁長氏の落選を伝えた。同日の4面トップにも「『オール沖縄』声上げ続ける」と、オール沖縄の意義を強調する記事を掲載した。選挙結果判明後に、翁長氏の陣営で玉城氏らが語った内容を中心にまとめたものだ。

2014年の知事選で一部の保守勢力や経済界も巻き込み、辺野古移設反対を旗印に誕生したオール沖縄だったが、7年間で状況は変わった。経済界を中心にオール沖縄から離脱する動きが出ただけでなく、辺野古移設の一番の当事者となる名護市では、18年の市長選で移設反対を強く主張してきた現職の稲嶺(いなみね)進氏が落選。今年行われた選挙でも自公推薦の現職が移設反対を訴えたオール沖縄の新人を抑え当選した。名護市でさえオール沖縄は既に勝てなくなっているのが現状だ。

知念氏は当選後に行われた地元紙・琉球新報のインタビューで、基地問題について「那覇にある基地については判断するし、全県的な基地負担軽減にも取り組む」とした一方、辺野古移設については「名護市民が選挙で議論したので名護市長の判断を尊重する」と答えている。

「赤旗」は、前述した記事と同じ10月25日付4面の「『建白書』の理念知念氏解答せず」の中で、辺野古移設の是非に直接言及しない知念氏の姿勢を「逃げ」と批判しているが、各地で辺野古移設反対を前面に押し出したオール沖縄勢力は民意の賛同を得られず軒並み落選。辺野古移設を最大の争点に据える従来のオール沖縄の手法はとっくに限界を迎えている。

沖縄の人々にとって基地問題は日々の生活に直結する。現地を訪れた人なら誰もが、暮らしと基地の近さに驚くだろう。玉城氏は記者団から辺野古移設を争点化する意義について問われた際、声を上げ続けることの重要性を強調した。だが、イデオロギー化した「辺野古移設反対」に偏重することは、基地負担軽減を願う県民の心に寄り添うことにはなり得ない。

(政治部 亀井 玲那)