【上昇気流】(2022年11月9日)

半導体イメージ

世界的な供給不足になっている半導体。米国は「半導体支援法」で生産のてこ入れをし、高技術の半導体の中国輸出規制を大幅に強化するなど慌ただしい。日本も国際社会の中で大きな力を発揮したい。

かつて国内で半導体開発の厳しい競争が繰り広げられ、その競争力から生み出される製品が世界市場に向け輸出された。当時、ある家電メーカーの社員から「国内の競争に勝つのは海外販路を見つけるよりよほど難しい」と聞いた。それほど競(せ)った。

当時の傑作は、通産省が半導体開発プロジェクトの超LSI技術研究組合をつくったこと。政府は半導体の国際競争力を引き上げるために支援し、参加した各メーカー間の融和も図った。

今日、目指すのは「パワー半導体」の技術力向上だ。モーターや照明の制御、電力の変換を行う半導体で、扱う電圧や電流が大きく電気自動車にも使われる。日本はこの分野で競争力を維持しており、ケイ素と炭素が素材のSiCパワー半導体の世界シェアは、ローム、三菱電機、富士電機、東芝などがトップ10に名を連ねる。

産官学の「学」でも動きがある。青色発光ダイオード(LED)の開発で2014年にノーベル物理学賞を受賞した天野浩・名古屋大特別教授らは18年までに、高性能で信頼性が高い窒化ガリウム結晶の半導体を作る基礎技術を確立させている。

飽くなき探究心をうかがわせる天野氏のまなざし。産と官を取り持つ役割に期待したい。