

山形県山形市では、障害児やそれに伴う自閉症などのための木琴を使用した音楽療育「こだまメソッド」が注目されている。NPО法人「アジェンダやまがた」(代表=児玉千賀子さん)が独自に開発したもので、「先生の授業を助け、子供も生き生きと学べる仕組みができる」として、全国へ支援の輪を広げていきたい考えだ。
(市原幸彦)
仲間と一緒に親しみ、社会性育む
レベルに合わせた合奏が可能
「アジェンダやまがた」は、平成23年から音楽を通じた療育や指導を行う指定障害児通所支援事業所を運営している。障害のある子供に、仲間と一緒に親しむことで協調性や社会性を育んでもらう独自のプログラムを提供。現在、この音楽教室を健常児も含め幼児から高校生まで、市内外の約90人が利用している。20人ほどのスタッフが奮闘している。
幼少期から音楽好きで大学でも声楽を専攻した児玉さん。「障害児と音楽・療育」をテーマに、支援方法を模索し始め、山形大学の担当教授とも共同研究を進めて開発したのが療育プログラム「音楽なかまプリモ・アンジェリ」だ。同29年からNPО法人として出発した。
クラウドファンディングによって集まった資金で、障害児向けの楽器「一音木琴あるも」を考案。8本(1オクターブ)の音板に分割した木琴だ(アルト・ソプラノの2種がある)。1音ごとに分割することで、多くの子供による合奏が可能となる。製作は木琴製造のトップメーカーに委託した。
音と色を組み合わせた色音符音階によって1音ごとに色がついており、楽譜の音符にも同じ色が使われる。「〇〇ちゃんは、ドとソだよ」と担当させる。子供の注意を引き付け、複雑な動作ができない子供も簡単に楽しく演奏できるという。また指導者も児童の知的レベルに合わせた指導がしやすくなる。音色は、木の特徴の柔らかい和やかな音質なので、金属音が苦手な子供には、特に好んでもらえているという。
1音ずつの楽器だから、児童のレベルに合わせて音を組み合わせることができる、これが最大のメリットだ。健常児から重度心身障害児まで一緒に参加する合奏が実現できるため、より大きな達成感を味わうことができ、社会性など発展させることができる。
教育現場からさまざまな改善点も提案してもらい、令和2年には再度クラウドファンディングで280万円を調達。50セットを発注して新たな教則本「あぷり~れ」と共に支援学校や支援学級に貸し出し、生かしてもらっている。
現場からは「音の楽しさが伝わる。触れてみたいと思えるのが大事」「生徒からの提案で使ってみることができた」「自分が担当した音の名前を忘れても、色で覚えることができるので分かりやすい」などの感想が寄せられている。保護者からも「スタッフの方々の対応も丁寧で、保護者の方への配慮もありとても良い関係をつくられています」などと喜ばれている。
今後は、全国の教育現場に届けることを目指す。アジェンダやまがたでは「みんなと共に取り組むことを、子供のうちにたくさん経験していただくことが大切。教育現場では、発達障害に配慮した音楽用の教材が不足している上、ノウハウが分からず、どう指導すればいいのか悩んでいる先生が多い。私たちのプログラムを活用してもらえば、音楽の授業がより充実した時間になるのではないか」と語っている。



