【社説】総合経済対策/消費の下支えに万全を期せ

政府は物価上昇への対応などを柱とする総合経済対策を決定した。目玉は電気・ガス料金の負担軽減である。ガソリン補助金の延長と合わせ、総額6兆円を投じて平均的家庭で計4・5万円ほどの負担軽減を見込む。

資源・エネルギー価格の高騰に加え、円安の進行で家計への負担は重くのしかかっている。消費の下支えに政府は万全を期すべきである。

事業規模は71・6兆円

経済対策の財政支出は39・0兆円、民間支出などを含む事業規模は71・6兆円。ウクライナ危機や歴史的な円安に伴う物価高の負担を軽減するほか、岸田文雄首相が掲げる「人への投資」の強化などに取り組む。

財源の裏付けとなる2022年度第2次補正予算案は、一般会計で29・1兆円、特別会計で0・5兆円を計上。財源は22年度税収の上振れ分や21年度決算の剰余金を充てるが、大半は赤字国債の発行で賄う。

対策の目玉は電気・ガス料金の負担軽減。電気料金は今年5月までの1年間で家庭用が約2割、企業用は約3割上昇した。対策では来年1月から9月にかけて、家庭向けに1㌔㍗時当たり7円を支援。1カ月の電気使用量が400㌔㍗時の標準家庭で月2800円の軽減となる。

もっとも、今回の軽減策は、電気料金で来春に見込まれる2割程度の値上がりを肩代わりするのが目的。東北電力や北陸電力などは既に、来年4月以降の家庭向け料金の引き上げを国に申請する方針を表明しており、電気代が下がったと家庭が実感できるのは来年1月から3カ月にとどまる可能性が高い。

都市ガス料金は、家庭向けで1立方㍍当たり30円を支援。標準家庭で月900円程度の軽減となる。ガソリン補助金は、来年1月以降も補助額の上限を下げつつ続ける。

首相は経済対策全体で「実質GDP(国内総生産)を4・6%押し上げ、来年にかけて消費者物価を1・2%以上引き下げる」と会見で強調したが、ウクライナ危機による燃料費の高騰や物価高に拍車を掛ける円安が来年9月までに収束する保証はない。特に物価動向については、ウクライナ情勢と円安の背景にある日米金利差の動向による。決意はいいが、大言壮語は慎むべきである。

経済対策は物価高騰などへの取り組みのほか、円安を生かした地域の稼ぐ力の回復・強化、「新しい資本主義」の加速など幅広い。規模は評価できるが、物価高対策にもっと厚みと工夫が欲しい。

前述の通り、電気・ガス料金の負担軽減は来年からであり、これまでの上昇分は含まれていない。しかも、9月に決まった電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援の5万円給付は住民税非課税世帯が対象であり、同世帯以外でも年間2万品目を超える食料品の値上げで家計に打撃を受けているにもかかわらず対象外となっているからである。

日銀は大規模緩和修正を

政府の経済対策(特に物価高騰対策)も、金融政策が円安を助長し逆行するものであっては元も子もない。日銀は金融政策で少なくとも大規模緩和は修正すべきである。