安保環境への認識に不安

「立憲民主」新執行部発足

メディアの質問に答える立憲民主党の泉健太代表=7月10日、東京・永田町の党本部で
メディアの質問に答える立憲民主党の泉健太代表=7月10日、東京・永田町の党本部で

「防衛相」不在のネクスト内閣

立憲民主党の機関紙「立憲民主」(9・16)は、1面で執行部の新体制がスタートしたことを伝えた。同時に、「ネクストキャビネット(次の内閣)」の設置を報告し、泉健太代表の「若手の登用を積極的に行っていく」との意気込みを紹介した。

ネクストキャビネットは英国の「影の内閣」を参考に、時の野党が発表してきた構想で、日本では自民党政権だった1991年に、野党第1党の社会党が「影の内閣」を発足させたのが始まりだ。2009年、民主党が衆院選で勝利し政権交代を実現した際にも鳩山由紀夫代表(当時)をネクスト総理大臣とする「内閣」体制があった。この時に下野した自民党も、10年に谷垣禎一(さだかず)総裁(当時)の下で「シャドウ・キャビネット」を設置。12年に安倍晋三元首相が総裁に就任し、自民党が政権復帰するまで続いた。

立憲民主党が9月13日にネクストキャビネットの顔触れを発表するとメディアは関心を持って報じ、TBSは速報まで打った。これを受けてにわかに注目を集めたのが「ネクスト防衛相」の不在である。確かに、名簿の中にそういった役職はなく、担当大臣がいないように見える。これを指摘された泉氏はツイッターで「『防衛大臣が存在しない』などとホンマに思ってます?」と猛反論。玄葉光一郎元外相がネクスト外相と兼務する形で「安全保障相」として任命されているということだった。

泉氏は同16日の記者会見で兼務について問われ、「実際に政権与党になったときに、常態化させるのはあまり考えられない」との認識を示した。また「外相と防衛相を兼務するのは実際の内閣では相当大変だ」とも述べている。

泉氏が言う通り、外相と防衛相の兼務は現実的ではない。各党が設置してきた歴代のネクストキャビネットでも、防衛相が兼任になっているケースは存在するが、最後の例は実に20年前の02年までさかのぼる。昨今のわが国を取り巻く安全保障環境は厳しい。防衛相を単独で置かない判断は、党内の防衛論客の不在を浮き彫りにしており、率直に言って不安を覚える。

発足と同日の13日に行われた「初閣議」で、泉氏は記者団に「政権担当能力を示したい」と語った。外交・安全保障政策では継続性と実効性が重要だ。政権交代した時に何を継続し何を変えるのか、現実的な外交・安保政策を語ることのできる人材が党内にいなければ、立憲政権は議論の俎上(そじょう)にも載らないのではないだろうか。

(政治部 亀井 玲那)