城下町全体の臨場感伝える
日本を代表する中世都市遺跡
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福井市の一乗谷(いちじょうだに)朝倉氏遺跡博物館が、10月1日、オープンした。中世都市としては日本最大規模の遺跡の一角に建ち、戦国武将・朝倉氏が築いた城下町全体の姿を臨場感たっぷりに伝えている。
朝倉氏遺跡は市の中心部から南東へ約10㌔の一乗谷にある。ここは三方を山に囲まれ、守りの面で軍事環境に適していた。朝倉氏はここで、五代103年間にわたって越前の国を支配した。城下町跡は武家屋敷や寺院、町屋、職人屋敷さらに道路に至るまで、町並がほぼ完全な姿で発掘され、国の重要文化財・特別史跡・特別名勝に指定されている。
同博物館はまれな遺跡の魅力を、さらに深く知ってもらおうと建てられた。目玉の展示は新たに設けられた「朝倉館原寸再現」「城下町ジオラマ」「遺構展示室」で、それぞれに趣向が凝らされている。
まず、「朝倉館原寸再現」は5代当主朝倉義景が暮らした朝倉館を、柱の位置などを原寸で忠実に再現し、義景と同じ目線で館内や外の風景が観賞できる仕組みだ。まるで館の主になったような気分が味わえる。
「城下町ジオラマ」では、これまでの発掘調査や研究成果で判明した歴史考証により、武家屋敷や寺院、町屋などを30分の1のスケールで再現した。興味深いのは、当時の城下を行き交う人々を120体の人形で表現している。武士や町人、商人、工人が身分ごとに正確に再現され、それぞれにストーリー性がある。顔の表情も一体ずつ異なり、子供たちが見れば、当時を学習するのにうってつけの教材となっている。
一方、「遺構展示室」では石敷遺構を露出展示している。これは博物館の発掘調査の中で偶然に発見された遺構で、流通拠点だった川湊「一乗の入江」の一角と考えられている。城下への物流がここを通じて運ばれたことがイメージされ、朝倉氏の育んだ文化の窓口だったことが分かる。
動画のナレーターを務める「名誉お屋形さま」(名誉館長)の案内も面白い。落語家の春風亭昇太師匠が務め、その軽妙な語りで遺跡全体の魅力を伝えている。朝倉氏の家紋「三つ盛り木瓜(もっこう)」をあしらった藤色の和服姿で登場し、「戦国大名の館、山城、城下町がこれだけのセットで残っているのは奇跡といっていい」と熱っぽく解説し、「遺跡全体が国の特別史跡になっており、中世の復原町並みが散策できます。この場所を見ずして、日本の中世は語れません」と言い切るほどのほれ込みようだ。
(日下一彦)



