【上昇気流】(2022年10月17日)

関西電力美浜原子力発電所3号機(時事)
関西電力美浜原子力発電所3号機(時事)

どんな科学技術にも光と影の部分がある。原子力の場合、電力の強力なエネルギー源だが、厳重な安全管理が必要だ。被爆国の日本で戦後、原子力を利用するのに行政当局は相当神経を使った。

原子力委員会は1950年代から社会に向かって原子力は安全だということをずっと言い続けた。原子力の光と影がそのまま社会に伝わっていくのでなければ、国民との間に良いコミュニケーションは取れない。しかし、光の部分だけが強調されたきらいがある。

それが、原発は絶対安全、いわゆる原発神話として国民間に定着。事業者の企業は、小さな事故すら公表することに恐れを感じ、時に隠蔽(いんぺい)さえした。自主的な安全管理が十分だったかどうか“金縛り”状態であった――2011年の東京電力福島第1原発事故までのあらすじはそうなる。

このほど、経済産業省は原発の運転期間を最長60年とする規制を撤廃する案の検討に入った。原子力規制委員会の審査に通れば60年を超えても稼働できるようにする。これに対し規制委は「利用政策側の判断でなされるべきもの」として認め、改めて厳正な規制を目指す。

また事業側の動きとして、三菱重工業は安全性を高めた新型原子炉「革新軽水炉」を関西電力などと共同開発する。行政当局、規制庁、事業者の3者が互いの役割を確認し新出発する意気込みだ。

日本の原子力政策はエネルギー安全保障が根幹にある。その方向に沿った着実な進展が望まれる。