企画展 秋田の縄文遺産/県立博物館

優品集め「縄文」を俯瞰

石や漆、魚、マツリ、土偶など約200点

遮光器土偶など縄文時代の優品を集めた「企画展秋田の縄文遺産」=秋田県立博物館

令和3年に「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産登録を果たした。大湯環状(おおゆかんじょう)列石と伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡という二つの遺産を擁する秋田県だが、県内にある国・県指定の縄文時代の優品を集めた「企画展秋田の縄文遺産」が秋田県立博物館(秋田市)で開かれている(11月6日まで)。石や漆、魚、土器、そしてマツリ関連の土偶など縄文の全体像に迫る。

総資料点数は厳選された約200点。ほぼ完形品の大仙市星宮(ほしのみや)遺跡の遮光器(しゃこうき)土偶もその一つという豪華さだ。

全体は6章に分かれる。会場入り口の「人面付環状注口(じんめんつきかんじょうちゅうこう)土器」(国指定:潟上市狐森(きつねもり)遺跡出土:同館蔵)は江戸時代に発見された。液体は頭部の注ぎ手から出る。

次に世界最大級とされる大型磨製石斧(ませいせきふ)(国指定:東成瀬村上掵(うわはば)遺跡出土)は、長さ60㌢、4・4㌔㌘にも及ぶ。大小4点が並んで置かれていた。北海道日高山脈のアオトラ石が素材で、600㌔㍍以上も離れ、縄文人の交易の広さを物語る。縄文時代前期(紀元前約5000~3000年)。

漆の道具が多く発見されている。特に晩期には盛んに土器や籠、櫛(くし)、弓に漆塗りが施され、墓に副葬され祭祀(さいし)に使われた。秋田市の遺跡からは5千点超が見つかった。

また能代市の柏子所貝塚(かしこどころかいづか)では鹿の骨で作った髪針や釣針などの漁労具、猪(いのしし)の牙の腕輪、そして千点以上ものおびただしいベンケイガイ製の貝輪などが出た。同館では「貝輪の大流行を物語るとともに、生産拠点だった」と見ている。

JOMONというと縄目模様の土器を連想するが、由利本荘市の根子ノ沢遺跡からは立体的に波打つ土器が見つかった。同館では「縄文土器は徐々に器の形を増やし文様を複雑化させていった。大きくうねる波状口縁や立体的な造形には縄文人の精神の躍動が感じられる」と解説する。

縄文時代後期には集落が小規模化し、環状列石に代表される大規模な祭祀場が形作られる。大館能代空港近くの伊勢堂岱遺跡は四つの環状列石で有名だが、完全な形をした土器が多く、入り組み紋や巴(ともえ)形文が見られる。土偶や土版、三脚石器、石剣類もあり、アスファルトが塗られたものが目立つ。

また阿仁川(あにがわ)中流域の拠点集落の一つ、北秋田市の白坂遺跡では「笑う岩偶」など軟らかい石材を加工した土偶や土板、ミニチュア土器などが質量共に豊富なことが展示品からうかがえる。

(伊藤志郎)